田中康夫は赤い羽根をつけてはいけないが、丸川珠代ならかまわない

あらかじめ謝っておくが、この見出しは正確ではない。本当は田中康夫赤い羽根共同募金に寄附をしてはいけないが、丸川珠代なら東京都以外であれば認められるということなのだが、見出しはやや煽り気味のほうが受けがいいので、わざとこうした。まあ、赤い羽根を身につけてはいけないなどという法があるわけがないので真に受ける人はいないと思うがいちおう断っておく次第。
さて、どうして赤い羽根が駄目なのか。理由は下記のとおり。

(公職の候補者等の寄附の禁止)

第百九十九条の二  公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者等の親族に対してする場合及び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会(参加者に対して饗応接待(通常用いられる程度の食事の提供を除く。)が行われるようなもの、当該選挙区外において行われるもの及び第百九十九条の五第四項各号の区分による当該選挙ごとに当該各号に定める期間内に行われるものを除く。以下この条において同じ。)に関し必要やむを得ない実費の補償(食事についての実費の補償を除く。以下この条において同じ。)としてする場合は、この限りでない。

赤い羽根共同募金も寄附の一種だから、素直に読めば政治家は自分の選挙区で赤い羽根共同募金にお金を出してはいけないということになる。昨日、この文章を書いたあとで、ふと公職選挙法を見ていてこの条文に気づいた。
ええと、これ本当?
調べてみると、どうも本当らしい。

三木市とそれ以外では書き方が違うのでちょっと気になるのだが、少なくとも自分の選挙区での寄附が禁止されているのは確かだ。だから、丸川珠代は東京都内で赤い羽根共同募金に応じてはいけないし、比例区選出の田中康夫だと全国どこでも不可、ということになるわけだ。
この件でさらに調べてみると、参議院の議事録で面白いやりとりを見つけた。少し長いが、きりのいいところまで引用しておこう。

○多田省吾君 それから加藤自治大臣にお尋ねしたいのですが、大臣は岡山県にお帰りになったとき、駅頭等で赤い羽根や緑の羽根あるいは各種の募金運動なんかを数多くやられておりますけれども、「どうぞ赤い羽根」と出されたときにどうなされますか。

国務大臣加藤武徳君) ここにもつけて参っておりますように、十月一日から共同募金が始まりまして、私は地方団体におったこともございまして、みずから共同募金に御参加願うような呼びかけをいたした立場でもございまして、十月一日に積極的に参加をいたしたのでございますけれども、ただ街頭募金等がなされております場合、あるいは街頭署名などがなされておりまする場合には、私個人のやっておりますことを端的に申しますならばやはりその呼びかけなりあるいは募金なりの目的などを吟味いたしまして対処する、かような根本の心構えで対処してまいっておるような次第でございます。

○多田省吾君 そうしますと、大臣は岡山県知事をなされていたときもございまして、共同募金は非常に御推進なさったと思いますが、岡山駅頭にお帰りになった場合は赤い羽根の共同募金には少なくとも参加されるということでございますね。

国務大臣加藤武徳君) そうでございます。

○多田省吾君 いまの公選法の寄付禁止規定から見ますと、赤い羽根というのはどうなんですか、選挙部長。

○政府委員(大橋茂二郎君) 大変むずかしい話でございますが、一応公職選挙法の百九十九条の二では、公職の候補者は選挙区内にある者に対して寄付することができない、こういう規定でございます。したがいまして、たとえば選挙区内にある者に対してはたとえ善意の寄付であっても、社会福祉施設等に対する寄付であっても一応これの対象になるというのが条文のたてまえであろうかと思います。

 ただ、いまのような場合について果たして厳密にそのような適用をするかどうかということについては、やっぱり一つの社会通念的なものがあるのではないかと思います。

○多田省吾君 私がこの前自治省の課長さんに聞いたときには、赤い羽根といえどもこれはやれないのだ、特に全国区の議員は全国どこでもできない、地方区の方はその県ではできない、はっきりそういうお答えがあったわけですよね。いま何だか選挙部長のお話を聞きますと、社会通念でこのぐらいはやってもいいのじゃないかというようなことがあるからというような、はっきりした御答弁じゃないように思いますけれども、はっきり言って、赤い羽根、地方区の方はその県で、全国区の方は全国区でできるんですか、できないんですか。はっきりしてもらいたい。

○政府委員(大橋茂二郎君) お答え申し上げます。

 たてまえとしては、寄付に該当する限りはやはりたとえ赤い羽根でもできないということであるべきだと思います。

○多田省吾君 そうでしょう。法律上はできないんですよ。それを自治大臣が平気で岡山県に帰ったとき、共同募金、赤い羽根やりますかと言ったら、やりますと、それなら公選法違反じゃないですか。こういう法律だからわれわれはこの前反対したわけですよ。

 それで、赤い羽根だけじゃありません。全国区の議員候補はそのほか社会福祉事業にも、あるいは学校の寄付とか、そういうものに対しても全然できないんですよね。だから去年の参議院予算委員会では、まあ個人的な名前申し上げて申しわけありませんが、当時の鳩山外務大臣、去年の秋でしたか、平気で予算委員会室に赤い羽根つけてきているわけです。それで、二院クラブの方が質問したら、自治大臣じゃなくて法務大臣がこれはできるんだと答弁しているんですよね。だから、そのように非常に政府部内でもこういった公選法の寄付禁止規定というのは混乱しておりますしね。社会通念上そんなばかなと思われるようなことが禁止されているわけです。これは私はちょっと行き過ぎだと思うんですよ。

 ですから、特に参議院全国区のような場合、自治大臣岡山県じゃなくて東京に来れば堂々と赤い羽根もできますけども、これは東京で買われたものだと思いますけどね。全国区の場合はもうすべてできないんですから。だから私はこういう少なくとも参議院全国区のような場合は、まあ特定のものに限って特定の地域に限って考慮すべき面もあると思いますし、また赤い羽根とか、こういう社会福祉事業なんかはやはり禁止規定を解くような方向で改正も考えなくちゃいけないんじゃないかなと、このようにも思いますけれども、まあ罰則こそありませんけれども、やはりこれは国会で決めたはっきりした国法でございますし、この寄付禁止規定というのは余りにも評判が悪い。これは趣旨を生かして何らかの考えるべき余地があると思いますが、大臣はどう思いますか。

国務大臣加藤武徳君) 十月一日は衆議院予算委員会がございまして、私は郷里に帰っておりませんし、弁明しておかなければなりませんのは、この羽根は東京でいただいたものでございますから、少なくも違反ではない、かような理解をいたしております。

 が、しかし現行法律がやはり選挙区内におきます公職の立場にあります者の寄付などを禁止しておるのでありますから、厳密な法解釈からいたしますならば、やはり選挙区におきまして、すなわち全国区の議員の皆さん方は、全国的に、地方区はその地方におきましては寄付は許されない、これがたてまえでございますから、かつてたばこの葉事件につきまして最高裁で一厘事件というのがありまして、たばこの葉一枚だってやはり窃盗になるんだ、かような判決のありましたことを私も勉強した記憶がございますけれども、事軽微だからということでそれを看過いたしますようなことがありますと、やはり制度全体が一穴から崩れる、かような心配もございますから、やはり厳密に対処してまいりますのが筋である、かように私は考えます。

○多田省吾君 ですから、国法ですから厳密に対処すべきものというのはわれわれ国会議員にとって当然の考えでありますけれども、それはわかりますけれども、ですから社会通念上参議院全国区の議員の百人だけが赤い羽根を全然国民の中で法律上つけられないなんて、ちょっとおかしいと思うんですよ。ですからその辺から考えて訂正すべき面も今後考えられるんじゃないか、こういうことを質問しているんですよ。

国務大臣加藤武徳君) いろいろ議論のあるところでございますが、さような方向での法改正がなされれば格別、現行法制下におきましてはことに選挙法が改正されましてまだ間のない時期でございますし、行政当局といたしましてはやはり現行制度を忠実に守っていく、かような基本の態度を現段階において崩して改正しなきゃならぬという意欲を盛り立てていきますほどの考え方はいまだ持っておらないことの御理解をいただきたい、こう思います。

○多田省吾君 私はこういったおかしなことは法改正すべきだと、このように思います。

ついでに、参議院会議録情報 第094回国会 公職選挙法改正に関する特別委員会 第3号衆議院会議録情報 第120回国会 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第4号にもリンクしておこう。
ついでのついでに逗子市記者会見記録にもリンク。赤い羽根への寄附を認めるように構造改革特区提案をしたそうだ。興味のある人はここ(PDF)の5ページとここ(PDF)の3ページも参照されたい。