狼と香辛料
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同じく『狼と香辛料』の外伝「林檎の赤、空の青」はホロとロレンスの日常を描いたものだったが、「少年と少女と白い花」にはロレンスは登場しない。少年クラスと少女アリエスの旅をホロが見守るという話だ。『狼と香辛料』の魅力のひとつはホロとロレンスの無茶苦茶濃厚な会話であり、もうひとつはロレンスの金儲けに関するあれこれなのだが、そのどちらもないので、かなり異質な雰囲気に仕上がっている。
第1話は登場人物の紹介で、第2話でいよいよ話が動き出し、さて最終話ではどう決着をつけるのか、と気にかかっていたのだが、こんな締めくくりにするとは予想外だった。とびっきり意外なわけではないが、長篇小説の一挿話としてはほどよくまとまっているのではないかと思う。言い換えれば、「これじゃ話が終わらんよ」ということなのだが。きっと、本になるときには加筆されるのだろう。
ともあれ、「少年と少女と白い花」を読んで、支倉凍砂がすぐれて長篇向きの資質をもった作家であることがわかった。たった3人しか登場しない番外篇であっても大長篇の兆しを見せているのだから。それはたぶん、世界を構成する意志と、その世界の細部への関心によって支えられているのだろう。今後、どのような物語が紡ぎ出されるのか、その動向に注目したい……と無難にまとめておくことにしよう。