地方交通あれこれそれどれ

論説 地方交通

論説 地方交通

いい意味でも悪い意味でも*1同人誌みたいな本だった。
もと松浦鉄道副社長が書いた文章と、もと有田鉄道周辺住民が書いた文章が並んでいるというのが凄い。また、編著者の知り合いの私信が「コラム」として収録されているのにも驚いた。編著者は日本政策開発銀行の偉い人だそうで、単なる感情論や思い入れを語るのではなく冷静かつ実際的な議論を期待して読んだのだが、その点ではあまり得るところはなかった。ただ、ちょっと面白いと思った点がひとつあった。それは地方鉄道の衰退の主因として挙げられた12の要因*2だ。

  1. モータリゼーション
  2. 少子化
  3. 高齢化
  4. 過疎化
  5. スプロール化
  6. 温暖化
  7. 不況
  8. 二次交通の衰退
  9. 会計・法規
  10. 大合併
  11. 財政難
  12. 事故・天災

この中で「おやっ?」と思ったのが「温暖化」だった。なんで温暖化が地方鉄道衰退の要因になるのだろう?
編著者曰く

近年の6*3は、積雪や道路凍結が減るからクルマの利便性が向上する結果として鉄道のマイナスに作用する。

なるほど。これは盲点だった。
そういえば、鉄道は自動車に比べて雪に強い乗り物だという話を聞いたことがある。確か、国鉄末期の赤字ローカル線の中には冬季の交通の確保を理由に廃止を免れたものがいくつかあったはず。だったら、逆に温暖化が進めば、ローカル線の衰退に拍車をかけることにもなるだろう。
温暖な気候の地方に住んでいるとなかなか出てこない発想で、目から鱗が落ちた。

*1:どちらかといえば悪い意味のほうが強い。

*2:23ページ。なお、1〜8は直接的要因、9〜12は間接的要因とされている。

*3:原文では丸付き数字。