理由あって……(略)

理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)

理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)

何か捻りのきいた見出しにできないかと思ったが、考えるのが面倒になったのでやめた。
早速本題。カバー絵に描かれている人物は誰か、という話。

 伊神さんは具体的に男性であるとも女性であるとも書かれてはいません。下の名前も明らかになっていません。性別を匂わせる発言は語り手の葉山くんの一人称により地の文による「彼」(p.43)、伊神さん本人の科白における「お、腰が痛い、僕はもうおっさんかな」(p.97)などがありますが、前者は女性にも(一応)使える人称ですし、後者はジョークとして言ったものとして、女性でも言う可能性は残されています。服装も「コートもマフラーも黒」(p.74)などと、どちらとも取れるものです。

確かに「彼」はもともと女性にも使える言葉だったが、今ではそのような用法は廃れてしまっている。文語体の小説ならともかく、現代日本語で「彼」が女性を指すというのは無理がある。
だが、主人公らしき少年の後ろにいるのが伊神だという説は、別に叙述トリックを前提としなくても成り立つのではないか。伊神は男性で、そのまま男性として描かれているのだと考えればいい。女装だと考える必要すらない。
スカート? あれは袴です。
長髪? 工場長だって、あのくらいの長さ*1でしょう。眼鏡はかけていないけど。

*1:写真でみた感じだと肩までかかるセミロングのようだ。