たまにはライトノベル以外の小説も読んでみよう

薔薇密室

薔薇密室

今日、近所の図書館で借りてきた。いま157ページまで読んだところ。557ページあるから1/4強といったところか。
皆川博子は名前だけは知っているが今まで一冊も読んだことはない。知人に猛烈な皆川ファンがいるので気にはなっていた。だが、特にわけもなく晦渋な文体ではないかと思いこんでいて、今日まで手を出さなかったのだが、急にライトノベル以外の小説が読みたくなり、どうせならライトノベルの対極にあるようなヘビーノベルにしようと思って借りてきた。
いざ本を繙くと決して読みにくい文体ではない。やや硬質ではあるけれど、予想していたような、妙にひねくり回った意味不明の比喩に彩られた修飾過多の文章ではなくて、むしろ意外なほど簡潔ですんなりと読める。ただし、その文章で描かれている内容は相当濃厚だ。文字通り短い「小序」のあとローマ数字で「I」から「IV」まで6部ないし6章構成になっているのだが、その「I」は現実と非現実がない交ぜになったグロ・ホモ・マゾ交じりの幻想譚となっている。
「II」はうってかわって現実べったりだが、その「現実」というのがナチスに侵攻されたワルシャワに住む人の日常生活なので、陰鬱で重苦しい。と思ったのだが、語り手の少女に想いを寄せる年下の少年が実は……というところまで読み、少し雰囲気が変わってきたような感じがする。
全然予備知識なしに読み始めたので、この先いったいどんな展開が待ちかまえているのか全く想像はつかないのだが、てでも「全く想像はつかない」というのは言葉の綾で、ちょっとくらいは予想できなくもない。タイトルに「密室」が入っているのだから、この後不可思議な不可能犯罪が発生するのただろう。不可能犯罪には名探偵がつきものだから、エキセントリックな探偵が登場した、幻想のヴェールを無茶苦茶のぐちゃぐちゃにしてトリックを暴き身も蓋もない真相を白日のもとに曝すことになるのだろう。「I」で出てきた「薔薇の若者」などという妖しい存在は、『占星術殺人事件』のアゾート幻想のような機能を果たしているものと思われる。ああ、楽しみだ。
では、続きを読みます。