中央線に食堂車なんてとんでもない!

この「喰ってから長時間電車に乗って帰宅するのはタルい」問題の解はズバリ、食堂車ではないでしょうか?電車に乗って食事してるうちに最寄り駅に着いてしまうなんて、画期的なソリューションじゃない?パンとかおにぎりとかを普通に車内で喰うのもあれだしさー。

食堂車つきだったらもう通勤快速とか特快とか言わず各駅でいいですよ。むしろ総武線より遅くたってかまいません。全部につけろとは言いませんが、5本に1本くらい食堂車つきの中央線があったらいいなー。いや、そんなに遠くまでいかないから普通の中央線でおねがいします。

久々に凄いトンデモ記事を読んだ。
文中の「中央線」がJR中央本線東京近郊区間のことを指すものだと仮定*1して言うが、この中央線は全国有数の混雑路線*2だから、食堂車を導入する余裕はない。

日本の鉄道の割には定時性はあまり良くない。ラッシュ時に5〜6分程度の遅れが頻繁に発生するので、終日定時運行するのは1か月で1日あるかないかである。これは乗客の多さと、1時間に最大30本という超過密ダイヤが主な原因である。2分に1本のペースは、10両編成での高速鉄道運行の限界である。他にも、人身事故の多さや、30分に1本走る特急や特別快速、通勤ライナーなど多種多様な列車種別があること、青梅線などの支線が多く運行形態が複雑などといった理由もある。他の東京近郊路線が15両編成で運転できるのに対して、中央快速線では最大10両編成と輸送力が低いため、混雑緩和が難しい。

ただでさえ混雑が激しく頻繁にダイヤが乱れている中央線に食堂車を導入したりすると、どんな混乱が生じるのかは容易に想像がつくことだろう。上で提案されている*3ように、列車種別を整理して各駅停車に統一すればダイヤの乱れは多少緩和されるかもしれないが、激しい混雑までが緩和されるわけではない。10輛編成の電車のうち1輛、いやその半分でも食堂用スペースにとられたら、残りの車輌は殺人ラッシュに見舞われることになるに違いない。
あるいは現在の10輛編成プラス食堂車で11輛にするという手もあるかもしれないが、中央線の多くの駅のホームは11輛編成に対応していないので、ホームはみ出し運転を余儀なくされることになる。通勤電車で1輛まるまるドアを閉め切って隣の車輌から乗り降りするというのは無謀なので先頭ないし最後尾に食堂車を連結することになろうが、そうするとラッシュ時に食堂車を利用できるのは事実上先頭から2番目ないし最後尾から2番目の車輌の乗客に限られることになる。いくら乗客の食堂ニーズがあっても、人の壁に阻まれて食堂車に移動することができないのでは宝の持ち腐れだ。
そもそも、常磐線グリーン車を導入したJR東日本がなぜ中央線はモノクラスのままにしているのかということを多少とも考えたことのある人なら「中央線に食堂車を!」などという自由奔放な意見*4は出てこないと思うのだが、どうだろう?

追記

上の文章をアップした直後にちょっと後悔した。
たぶん言及先の筆者は中央線に食堂車を導入することなどできっこないと知ったうえで軽い雑談のつもりであの記事を書いたのだろうし、主眼点は最後の一文にあるのだろう*5。それなのに、大真面目に反論してみせるのは野暮の骨頂というものではないか、と。
そこで、この記事を削除しようかとも思ったのだが、そこまですることもないだろうと思い直し、結局そのまま残すことにした。「野暮を承知でツッコミ」というようなアリバイ的なことも考えたが、いったんアップしたあとでこっそりそんな文言を挿入するのはかえって見苦しい。いや、そんなことを言い出したら、こうやって補足していること自体が見苦しい所行ではないか、とか、どうせなら壮大なホラ話か何かに紛れ込ませてわけがわからなくしてしまえばいいのではないか、とか、いろいろと想念が渦巻きどうしようもなくなってきたのだが、そうやって意識の流れをだらだらと書いているといつまで経っても終わらないので、ひとまずここでおしまい。

*1:大阪市営地下鉄にも中央線はあるし、JRの中央本線は名古屋まで通っているが、「通勤快速」「特快」という列車種別はないので。

*2:たとえば全国混雑率ランキング:駅ごのみを参照。

*3:というふうに好意的に読むことにしたが、単に「食堂車つきの電車が各駅停車でも構わない」というふうにも読むことができる。

*4:婉曲表現です、念のため。

*5:首都圏の鉄道はたまにしか乗らないので、件の店も二、三回しか使ったことがないが、まあ一度食べればだいたいわかる。