わりと真面目なミステリでした
- 作者: 樺薫,アメイスメル,坂口安吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/06/19
- メディア: 文庫
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最後に提出される推理がそれまでのものに比べて格段に面白いわけではなく、その点ではやや物足りないが、名作と言われる『毒入りチョコレート事件』でも結末はあまりぱっとしなかったから、まあこんなものでしょう。
面白く読めました。
追記(2008/06/20)
本文では書き忘れたが、これからこの本を読もうと考えている人のために少しだけ。
冒頭で、この小説が「投手殺人事件」と『不連続殺人事件』から着想を得たものだと書かれているが、特に「投手殺人事件」に拠るところが大きいので、極力先に読んでおくことをお薦めする。短篇だからすぐに読める。
『不連続殺人事件』も先に読んでおくと、「ああ、あのネタをここでこう使うのか」と感心して面白さが増すが、順序が逆でも「ああ、このネタがあそこでああ使われたのか」と思うことだろうから、強いて先に読んでおく必要はない。
追記の追記(2008/06/22)
そろそろ誰かツッコミを入れるかと思っていたのだが、誰も言及していない*1ようなのでいちおう書いておこう。
『藤井寺さんと平野くん』113ページで『不連続殺人事件』が第1回日本推理作家協会賞受賞作だと書かれているがこれは間違い。これは第2回探偵作家クラブ賞受賞作である*2
また、作中で何回か、「投手殺人事件」を扱ったのが京都府警だという記述もあるが、これも間違い。25年当時、京都府警察本部は存在しなかった。原作では警察機構の記述がぼかされているので断言できないが、おそらく京都市警*3が受け持った事件だと思われる。
前者の間違いは、特にミステリに興味がなさそうな藤井寺さんの書いた文章の中に、後者の間違いは特に戦後警察史に関心がなさそうな平野くんの一人称での語りの中に、それぞれあらわれるので大きな欠陥ではないが、ないに越したことはない*4と思われる。