一迅社文庫創刊第3弾全3冊の感想
一迅社文庫創刊第1弾全7冊の感想、一迅社文庫創刊第2弾全3冊の感想に続き、3ヶ月め。今月は一迅社文庫アイリスが創刊しているが、さすがにそっちまでは手が回りません。無印の一迅社文庫完全読破もいつまで続くやら。
以下、読んだ順に簡単に感想を書きます。
さくらファミリア!
- 作者: 杉井光,ゆでそば
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2008/07/19
- メディア: 文庫
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2,000年のときを超えた借金が巻き起こす、祐太と石狩姉妹のドタバタ借金ラブコメディ、ここに開幕!
ヒロインの双子姉妹の姓は「石狩」ではなく、「砂漠谷」だ。姉が「砂漠谷エリ」、妹が「砂漠谷レマ」という凄まじい名前なのに、なんで間違えるかなぁ。
姉妹の名前の出典はマタイによる福音書第27章第46節*1だ。
三時ごろ、イエスは大声で叫ばれた。「エリ、エリ、レマ、サバクタニ。」これは、「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
同じ言葉はマルコによる福音書第15章第34節にも出てくる*2。
三時にイエスは大声で叫ばれた。「エロイ、エロイ、レマ、サバクタニ。」これは、「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
ヒロインの名前の出典がマルコ福音書だったならもっとエロイことになっていたんじゃないか、などと思った。
……えっと、『さくらファミリア!』はそういうお話です。何のことを言っているのかわからない人は、ぜひご一読ください。
杉井光は鬱展開に定評がある*3が、今回は重苦しさをほぼ完全に払拭して明るく楽しいコメディ一色に仕上げている。カバー絵から受ける印象ほどには美少女文庫っぽくはないし、若干ラブ寄せ不足の感もあるが、続きがありそうなので、続巻で嬉し恥ずかしいやーんばかーんな展開になることを期待しよう。
ところで286ページ7行目冒頭の単語は「神父」であるべきところ、別の単語になっている。これは間違いではないが、不適切だろう。
幻想症候群
- 作者: 西村悠,鍋島テツヒロ
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2008/07/19
- メディア: 文庫
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第1話「遥か遠くの夏」の水没した都市、あるいは第4話「一〇〇〇年の森」の××××後の世界でひとつの目的をもって動く××××*5など、SFによくある手垢のついた設定ではあるのだが、既視感が鑑賞の妨げにならなかったのはどういうことか。これは慎重に検討してみる価値がある。でも検討しない。
同じ作者の『二四〇九階の彼女』『]二四〇九階の彼女2』は未読だが、機会があれば読んでみたいものだ。
暗く、深い、夜の泉
- 作者: 萩原麻里,Fuzzy
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2008/07/19
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メインの視点人物である佐原佐記子のほかに数人の登場人物の視点で語られる三人称多視点小説だが、その中に謎の核心を握る倉宮凪のパートがかなり多く挿入されていて、やや気になった。別に単一視点で統一する必要はないと思うが、倉宮凪の心理や彼女の過去のエピソードなどは最後の最後まで隠しておいて、佐原佐記子の視点から徐々に暴かれるという構成のほうがよかったのではなかったか。
それはともかく、小説後半で段落冒頭の字下げが行われていない箇所がいくつかあった。それと、あのイラストはいかがなものか。淡いタッチというより、単なるラフ画のように見えるのだけど。