観光産業という魔物

ロズウェルなんか知らない (講談社文庫)

ロズウェルなんか知らない (講談社文庫)

先日、中国地方の鉄道乗りつぶし旅行の際に携えて、津山のホテルで読んだ本。読み始めたのは午後10時くらいで、途中まで読んで眠くなったらやめるつもりだったのだが、結局午前3時までかかって全部読み通してしまった。
この面白さを未読の人に説明することは難しいのだが、強いていえば、ツィス』と『亜空間不動産株式会社』と『紳士同盟*1を足してかき混ぜたような感じだ。
もっとも印象に残ったのは483ページの次の一節。

考えてみれば第四次産業、観光などというもの自体が胡散臭さなしには、成立しない。どうということもない海や山、小さな歴史上の出来事にもったいをつけ、何かありがたげなイメージを作り上げて、訪れる物好きを幻惑して非日常を提供するのが観光産業なのだから。

以前から何となくぼんやりと感じていたことがストレートに述べられていて、思わず膝を打った*2
観光による地域振興に関心のある人には必読の一冊と言えよう。そうでない人もぜひ手にとってみてほしい。

*1:いずれも複数の版があるが、自分が読んだ版を掲げることにした。いやー、昔はいい小説がいっぱいあった。

*2:慣用句です、念のため。