冬きたりなば

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

見出しは星新一の『冬きたりなば (ハヤカワ文庫 JA 17)*1から。タイトルから連想しただけで内容は特に関係ない……と思ったが、微妙に関係がなくもないかもしれない。
さて、この『ハローサマー、グッドバイ』は先日の九州旅行中に読んだ。なぜ九州で読んだかといえば、19日に新大阪の新幹線コンコースにある売店で売っているのを見かけて買ったからだ。なぜ、そんなところで買ったかといえば、旅行のお供の本が不足*2していたからだ。なぜ、不足していたかといえば、一迅社文庫の9月の新刊を買うつもりが入手できなかったからだ。なぜ入手できなかったかといえば……そんなことは知らない。版元か取次にきいてくれ。
そういうわけで、特に明確な意志があったわけでもなく、なんとなく状況に流されるままに買って読んだ本で、あまり期待もしていなかった。旧版がサンリオSF文庫から出ていたという程度の知識はあり、サンリオSF文庫といえば『爆発した切符』を連想してしまい、何が何だかわからない小難しい前衛小説*3ではないかというような予断があったせいでもある。
全然そんなことはなかった。
地球外の別世界を舞台にしたSFではあるが、いったん基本的な設定に馴染めば、ほとんどそんなことを気にせずに読むことができる。登場人物の心理や行動はふつうの人間と特に変わるところはなく、その点でも負担は少ない。そういう小説だと、SFであることの意義が問われそうなものだが、この小説にはそのような懸念は無用だ。紛れもなくこれはSFであり、SF以外のいかなるジャンルにも不可能なことをやってのけているのだから。だが、その点について詳しく説明するのは控えておかなければならないだろう。未読の人の喜びと楽しみを奪うことはゆるされないだろうから。
『ハローサマー、グッドバイ』はまた青春小説でもあり、恋愛小説でもある。そして、ほんの少しではあるが冒険小説やポリティカルサスペンスの要素もある。それぞれの要素の配分は異なるが、『とある飛空士への追憶』に似ていなくもない。つまり、ライトノベル読者にも十分受け入れられる作品だと言えよう。実際、2008年上半期ライトノベルサイト杯に投票してしまった人もいるくらいだ。今からでも遅くはないので、世のラノベファン諸氏はこぞって『ハローサマー、グッドバイ』を読み、2008年下半期ライトノベルサイト杯に投票するといいだろう。
いや、本音をいえば、『ハローサマー、グッドバイ』をラノベ読者が強いて読む必要はないと思っている。ただ、この本の売り上げ次第で続篇の翻訳が出るかどうかが決まるそうなので*4、ぜひとも多くの人に本を買って貰いたいのだ。
迷っている人にはとりあえず次の感想文を読んで貰おう。

さあ、どうだ!
えっ、声優オタの戯言は聞きたくないって? それは失礼。では、こっちはどうでしょう。

でもって、読了後に腑に落ちない人はこちらを参照するといいでしょう。

では、諸君、次は続篇が出たときに! グッドバイ!*5

*1:これは『宇宙のあいさつ (1963年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)』を文庫化した際に2分冊したうちの1冊。もう1冊の『宇宙のあいさつ (ハヤカワ文庫 JA 16)』と合わせて、後に『宇宙のあいさつ (新潮文庫)』として再度1冊にまとめられたが、その際、自選作品集『ボッコちゃん (新潮文庫)』既収6篇を割愛している。で、「冬きたりなば」はその6篇のうちの1篇なので、これから新潮文庫版で読みたい人は『宇宙のあいさつ』ではなく『ボッコちゃん』を読んでください。

*2:手許には『マーベラス・ツインズ契 (2)めぐり逢い』しかなく、それだけでは到底4日間の旅行中持ちこたえられないことは明らかだった。

*3:などというとバロウズファンに怒られるかもしれないが、SFに関しては全くのど素人が無見識と無教養を丸出しで言っている戯れ言なので、ご容赦願いたい。決してウィリアム・S・バロウズを貶めているわけではありません。

*4:もう決まっているという噂もあるようだが、売り上げが多いほうがより確実になることは間違いない。

*5:このように書くと、このまま日記の更新を中断してしまうような雰囲気だが、そういうわけではありません。