博覧会と廃墟

先日の九州旅行で、はじめて熊本市現代美術館を訪れた。前に熊本に行ったのは前世紀のことだから、まだこの美術館は影も形もなかった。
今やっている展覧会は「メモリア−まなざしの軌跡」展というもので、その紹介ページを事前にざっと見ていたのだが、本当にざっと見ただけだったので、妙な勘違いをしていた。

●出品作家
新興熊本大博覧会 Kumamoto Fair in 1935
アナザーマウンテンマン Anothermountainman
チェン・ジエレン Chen Chieh-jen  陳界仁
千々岩修 Osamu Chijiiwa
カンディダ・ヘーファー Candida Hoefer
マリエッラ・モスラー Mariella Mosler
ピーター・ローゼル Peter Roesel
イヴォンヌ・リー・シュルツ  Yvonne Lee Schultz
レオニード・ソコフ Leonid Sokov
須田悦弘 Yoshihiro Suda

「新興熊本大博覧会」というのが人またはグループの名前だと思いこんで、変な名前の芸術家もいるものだと思いつつ会場に入ると、これは本当の博覧会だった。ちなみに、世界の博覧会 Exposition in the Worldというサイトの1935年のページに新興熊本大博覧会ほかの写真が掲載されている。なんだか未来の光景のようだ。
さて、「メモリア−まなざしの軌跡」展に話を戻そう。
この展覧会のジャンルを一言で言い表すことはできないが、半分くらいは建築展だと言っていいだろう。前述の新興熊本大博覧会のほか、アナザーマウンテン*1の廃墟ビル写真、レオニード・ソコフの美術館模型、カンディダ・ヘーファーの図書館内部写真、そしてチェン・ジエレンの廃工場映像。
特に、チェン・ジエレンの映像には強く心を打たれ、30分を超える作品を最初から最後までみてしまった*2。この作品は「ファクトリー」というタイトル*3で、2003年の作。7年前に閉鎖されて廃墟となった縫製工場を舞台として、そこでかつて20年以上働いていた労働者を集めて撮影した作品だ。彼女たちは黙々と無言でミシンを操り、それを淡々と無音の映像が記録する。途中、かつて政府が作成したドキュメンタリー・フィルムを挿入し、製造業の勃興期と衰退した現在とを対比させるという趣向になっている。
この作品についての作者の言葉は展覧会場にパネル掲示されていたほか、この展覧会のカタログI*4にも掲載されているが、それを手入力するのは面倒なので、ネット上で見つけた文章をコピペしておく。

1960年代因為冷戰與廉價勞動力的關係,台灣成為了世界主要的加工區之一。90年代以後台灣的密集勞力業,開始外移至勞力更便宜的區域,於是工廠開始大量裁員或關閉。

2003年我邀請偶然相識的聯福製衣廠的成衣女工,回到她們曾經工作了20幾年,如今已荒廢7年的工廠,拍攝了這部短片。7年前因為資方在拒付退休金與資遣費下惡性關廠,雖然當時曾經發生過激烈的勞工抗爭運動,但問題至今依舊懸而未決,工廠繼續處於荒廢的狀態。

這同時也是世界各地許多勞工的相似經驗,一個「移動」與「無法移動」的生產關係。「工廠」為了尋找更廉價的勞力而不斷的遷移它處,失業的勞工則在被遺棄後,只能繼續在原地徘徊,無法遷移。

因為這座荒廢的成衣工廠內,還保留著7年前的殘餘物,如停在七年前的日曆、報紙、打卡鐘、工作桌椅、生產機具、電風扇等,以及7年下來所累積的灰塵,停滯的污濁空氣,和當年勞工抗爭時,所遺留下的擴音器、喇叭、抗議布條等,經過了7年,這些物件已具有本身的時間意義,因此我除了只租回當年已經被賣掉的同廠牌縫紉機,和勞工在抗爭時,所曾使用過的類似車輛外,在影片中,我盡可能只運用工廠內原先所遺留下來的廢棄物。因為這7年的時間,這些廢棄物已同時包含了「停滯」與「流動」的「雙重時間」,這種雙重的時間感,是我結構影片敘事時的主要的依據。

由於女工們希望以保持沉默的方式參與影片的拍攝,所以在正式拍攝前,我先邀請她們回到工廠內「工作」,她們很快的進入專注的工作狀態中,或許是因為相隔了7年的時間,再重新回到「工作」中,她們與曾經相處過20年的縫紉機、衣服的布料、甚至與桌上的茶杯互動時,似乎有著一種難以言說的神情。

影片中除了邀請女工重新回到工廠「工作」外,也擷取了她們當年抗爭時的肢體動作與片段意象。而攝影機的運動只以凝視和類似「掃描」的方式拍攝女工們極其簡單的動作,我用這些簡單的影像與1960年代台灣加工產業剛開始時,官方所拍攝的紀錄片相互對照其間的演變。同時為回應女工們希望保持沉默的態度,因此抽離了影片中的所有聲音。

漢字が多すぎるのが難点だが中国語だから仕方がない。
経済のグローバル化により、資本は簡単に海外に移転するが、労働者は産業が空洞化した国内に取り残される。そういう社会問題を念頭においてみると何とも言えない陰鬱な気持ちになり、たまらない。「芸術のための芸術」ではなく、「政治的メッセージ発信のための道具としての芸術」だと忌避する人もいるだろうが、そういう観点を抜きにしてもそれなりには楽しめる(?)ものではないかと思う。
熊本近辺の人、あるいは近々熊本に行く予定のある人にお薦めだ。会期は10月19日まで。

*1:こっちは人名。

*2:展覧会で映像作品をみると何となく落ち着かないことが多くて、10分以上の映像だとたいてい途中で席を立ってしまう。

*3:原題は「加工廠」。日本語に訳せば「工場」でいいと思うのだが、なぜわざわざ英題をカタカナで表記したものを邦題として表示していたのか、その理由はよくわからない。

*4:「メモリア−まなざしの軌跡」展にはカタログが2つある。カタログIの発行日は会期開始日と同じ2008年7月19日付。、カタログIIのほうはそれから1ヶ月後の8月19日付となっている。