これは推理小説ではない

名探偵失格な彼女 (VA文庫)

名探偵失格な彼女 (VA文庫)

本文2ページめ*1にいきなりこんなことが書いてあった。

そもそもこれは、推理小説ではない。
謝罪と警告の意味を込めて、もう一度、はっきりと明言しておく。
これは推理小説ではない。ノンフィクションである。

2回目の「推理小説」には「ミステリ」とルビが振られているが、まあ、そんなことはどうでもいい。
タイトルに「名探偵」などという言葉が含まれていたので、てっきり推理小説だと思って「あの『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の作者がどんなミステリを書いているのだろう?」という興味から手に取ったのに、これではがっかりだ。
そういうわけで、あまり期待せずに読んだのだけど、半分ちょっと過ぎからどんどん面白くなっていった。
「あ、そんな記述が伏線になってたのか!」と少し驚いたこともあった。
あまり内容を詳しく書いてしまうと興ざめする人も多いだろうから*2後は読んでのお楽しみということにしておこう。果たして『名探偵失格な彼女』は冒頭で宣言しているように推理小説ではないのか否か。
最後におまけ。
246ページに「東京と群馬と九州」という言い回しが出てくる。「東京」と「群馬」は都道府県名*3だが、「九州」は地方名でねカテゴリーミステイクが生じている。東京一極集中が進んでいるので「東京と九州」という並置や対比はさほど不自然ではないが、そこに群馬が入ると途端にアンバランスになる。
とはいえ、この不均衡は、それぞれの地名を客観的に眺めた場合のことであって、群馬の住民か群馬出身の人なら違和感はないだろう。首都と所在地(出身地)と遠くの地方を並べただけ*4なのだから。作者が群馬在住/出身かどうかは知らないが。
ところで、群馬といえば何といっも蒟蒻と温泉だ。だからどうした、と言われると別にどうもしないのだが、「温泉こんにゃく芸者」という映画があることを最近知ったので、何となく書いてみた。残念ながら舞台は群馬ではないらしいが。

*1:ページ数でいえば5ページ。

*2:これは半分言い訳のようなもので、適切な要約を行う自信がないということでもある。

*3:「東京」は都市名でもある。現在、行政区分としての「東京市」は存在しないが、東京が世界有数の都市のひとつであることに違いはない。一方、「群馬」は郡の名称でもあったが2007年に群馬郡は消滅した。

*4:人は自分にとって縁の深いものほど細分化し、縁の薄いものほど大まかな捉え方をする。