宮崎県の「いきいき集落」は神戸空港「マリンエア」の夢を見るか?

いきいき集落』の名が、宮本常一曰くの『いきいきしていた戦後農民』から出たものであることは論を俟たない。すなわち篤農家を中心に農民自体が主体となり、近隣や時には遠方の農村と相互に交流して、農業の発展に努めた姿である。その後の官僚組織の介入で瓦解する前の農村を指す言葉だ。つまり、農村の住民が主体的に活動してほしいとの宣言に他ならない。

これ、たぶん軽いジョークのつもりだと思うんだけど、「論を俟たない」というのをまともに受け取る人が出て妙な「常識」が形成される*1前に火消しをしておこう。

ここを見れば明らかなように、「いきいき集落」という呼称は、宮崎県の公募に応じた熊谷幸平氏ほか4人の案を採用した*2もので、宮本常一との関係を示唆するような証拠は認められない。もちろん、そのことから直ちに「いきいき集落」と宮本常一が無関係だと立証されるわけではないから、かの神戸空港の愛称「マリンエア」の名付け親が実は民俗学に造詣が深いのだという仮説を立てる余地はあるのだけれど、それよりも、堅苦しいお役所言葉を嫌うお役所向けに「いきいき」というやわらかくカドの立たない言葉を選んだだけだと考えるほうが自然だ*3
ついでに、熊谷幸平氏の「いきいき集落」と「マリンエア」以外の輝かしい栄光の数々を紹介してみよう。

*1:杞憂かもしれないが、世の中どう転ぶかわからないので注意するに越したことはない。

*2:ここで言及したように、「いきいき集落」というフレーズの使用には少なくとも2つの前例があるが、たぶん偶然かぶっただけだろうと思う。特に根拠はないけれど。

*3:もちろん、これもひとつの仮説に過ぎないので、異論の余地はある。

*4:リンク先は募集案内のページ。国土交通省の入選発表ページを見つけることができなかったので、かわりにここここここにリンクしておく。