一迅社文庫2009年1月刊行全3冊の感想

はじめに

えっと、時間がないので前置きはパス。

月色プラットホーム

月色プラットホーム (一迅社文庫 み 2-1)

月色プラットホーム (一迅社文庫 み 2-1)

舞台となっている鉄道のモデルが江ノ島電鉄であることは論を俟たないが、駅名が「道明寺」なので変な感じがした。この作品を読み終えた直後にここを読んで「うん、そうだよな。誰だって近鉄道明寺駅を連想するよな」とひとり頷いたものだ。
鉄道ネタはともあれ、幼なじみと幽霊列車の車掌のダブルヒロインのどちらに主人公が転ぶのかが中盤すぎてもわからないところが面白かった。直接の続篇は出ないと思うが、脇役の視点の番外篇などがあれば読んでみたいという気になった。

エクスチェンジ!

エクスチェンジ! (一迅社文庫 (く-02-01))

エクスチェンジ! (一迅社文庫 (く-02-01))

昨年末に読んだ『しないの。』はわりと面白かったのでこれも期待していたのだが、エロ成分がほぼ皆無の健全ジュブナイルで、全般的に既視感がつきまとい、あまり楽しめなかった。また、文章面でも、場面転換なしにいきなり視点が変わったり*1、初対面の人物の名前がいきなり地の文に書かれていたり*2していて、ぎこちない。
あとがきでは続篇があるようなことを書いてあるが、あまり読みたいとは思わない。いろいろな意味で不満の残る1冊だった。

魔王と踊れ! Legend of the Lord of Lords

魔王と踊れ!  Legend of the Lord of Lords (一迅社文庫 う 2-1)

魔王と踊れ! Legend of the Lord of Lords (一迅社文庫 う 2-1)

こちらは逆に事前には全く期待していなかった。エロゲーのノベライズでかなりダイジェストしていてエロシーンをばっさり抜いているというのだから、「目黒のさんま」に出てくるさんまの吸い物のような話ではないかと思ったのだ。でも、実際に読んでみると、ダイジェストゆえにテンポが速くて、古龍みたいなノリで読めたうえ、エロシーンが欠けている分かえって想像を掻き立てられて、ゲームのほうもプレイしてみたいという気にさせられた(((でも「うみねこ」だけで今は手一杯なので、手出しするつもりはない。))。
そういうわけで意外と楽しめたのだが、でもやっぱりこの人にはもう一度オリジナル作品を書いてもらいたいと思う。『輪舞曲都市 Ronde‐City』からそろそろ7年も経つ*3のだから。

おわりに

折り込みチラシでは2月の新刊として3タイトルが予告されているが、そのうち『ゴースト・ライト』(森野一角*4)は延期になったようで、公式サイトではかわりに『ようこそ青春世界へ!』(淺沼広太)が今月の新刊予定に入っている。まだまだ生産体制が安定していないことがわかる。
今のところ月3冊刊行体制は崩れていないが、この分だと刊行点数が増えるのはしばらく先になりそうだ。

*1:74ページ10行目で「嬉しかった」のは冬馬だが会話文を挟んで2行あとで「ふたりのやりとりを視界に捕らえ」ているのは明菜で、ここで視点が転換している。最初すぐに気づかず、その次の行で「脇腹をつつかれた」のも冬馬だと思って読んでしまい、戸惑った。

*2:20ページ5行目で、冬馬には何の予備知識もないはずの明菜のフルネームが出てくる。その前に登場した澪は、会話で名前を呼ばれたあと地の文で「澪と呼ばれた女」と書かれており、きちんと段階を踏んでいるのに、なぜヒロインの明菜をぞんざいに扱ったのか不思議だ。プロローグで既出だから、ということなのかもしれないが、時間的順序を考えると疑問が残る。

*3:その後、2007年に短篇「月のない夜に」を雑誌に発表していているが、たぶんほかにオリジナル作品はなかったはず。チェック漏れがあったらごめん。

*4:どうでもいいが、森野一角がスーパーダッシュ文庫の『帰宅部!』シリーズの作者だとつい最近知って物凄くびっくりした。