ツケを払うのは誰?

この記事のブクマに運賃値上げについて言及しているコメントがいくつかあった。2ページ目の末尾に

国や新潟・長野両県の周辺自治体は99年、協議会を設け、10年かけて大量取水による生態系などへの影響を調査。3月末にもJR東に、取水を大幅に制限するよう求める提言をまとめる予定だ。JR東は「協議会の結論は尊重したい」としているが、代わりの電気を電力会社から購入することになれば、「大幅な経費増につながる」(沢本役員)としており、首都圏内の運賃にも影響しかねない状況となっている。(三浦英之)

と書かれているからだ。なんとなくJR東日本執行役員である沢本尚志氏が首都圏の運賃への影響について言及したかのような雰囲気があるが、立場のある人が不用意にそんなことを漏らすとも考えにくいので、これは朝日新聞の三浦英之記者が推測したことなのだろう。
宮中ダムで発電した電気は主として首都圏の電車運行に使っているそうだが、だからといって取水制限に伴う経費増のしわ寄せが首都圏の運賃値上げという形で表れるのはおかしな話だ。これまでの不正取水による経費削減効果はJR東日本の会社全体に及んでいるのだから、首都圏以外の路線の利用者も等しく間接的利益を受けているはずだから。路線ごとにシビアな独立採算制をとっているのでない限り、非電化区間でさえ不正取水の恩恵を受けていることになる。
ただ、そうは言っても、JR東日本の収入のかなりの部分が首都圏から上がっているのも間違いない。正確なデータは持っていないので定量的な分析はできないけれど、津軽線岩泉線の運賃を1000円あげても山手線の運賃を10円上げるのに遠く及ばない*1、という程度なら憶測で語ってもまず間違いがないはずだ。
不正に全く関わっていない利用者がそのツケを運賃値上げという形で払わされるというのは心情的には納得できないが、それを言うなら一部の関係職員や職務上責任を負うべき役員以外の大部分のJR東日本社員がツケを給料カットとして形で払わされるというのも同程度に不条理な話だ。かと言って、全くおとがめなしというわけにもいかないだろう。記事の内容から察するに、河川法第47条第3項違反ではないかと思われるが、同法第105条第3号に基づく罰金30万円だけですませて行政処分なし……というのも無理だろうなぁ。

*1:今のJRの運賃体系だと山手線(+山手線内の中央・総武線)の運賃だけ上げることはできるが、津軽線岩泉線など山手線以外の特定の路線の運賃だけ上げることはできないので、この比較には実はあまり意味はない。