不思議なグラフに頭がくらくら

実質成長率と人口移動のグラフを見て思ったことを簡単に箇条書きにしておく。

  1. グラフには1955年から2005年まで5年刻みのデータが記載されているように見えるが、出所とされる『高度経済成長は復活できる』が発行されたのは2004年のことだから、何か変だ。この本が増刷されたときにグラフが増補されたのだとすれば版数を明記すべきだろうし、本に載っていない2005年のデータを追加したのならその旨を断っておくべきだろう。
  2. 「実質成長率」とは、一定の期間の実質GDPをその前の期間の実質GDPと比較した増減率のことで、年単位なら通常は対前年GDP増減率だが、このグラフのデータは5年刻みなので対5年前GDP増減率とも考えられる。どちらなのかは出所の本を読めば書いてあることなのかもしれないが、大して字数を要することでもないのだから註釈をつけておいてほしいものだ。
  3. グラフに示されたデータは1955年を100とする指数化が施されているが、経時的変化に関わるデータをこのように加工するとわかりにくくなる。素直に実質成長率はパーセント、人口移動は万人を単位とした2軸グラフのほうがよかった。どうしても1955年のところで揃えておく必要があるとも思えない*1が、もしそうしたければ目盛りを調整すればいいだけのこと。
  4. 内閣府国民経済計算(SNA)ホームページに掲載されている時系列表をみると、GDPは1955年から、その増加率は1956年からのデータしか掲載されていなかった。では、1955年の実質成長率のデータはいったいどこから入手したものなのだろうか?
  5. このグラフでは、実質成長率と人口移動が概ね似たようなパターンを描いて変化していることはわかるが、どちらがどちらに影響を与えているのかまでは読み取ることができない。仮に一方が他方にやや先行して変化しているのだとしても、5年刻みでは粗すぎてそれがわからないのだ。主張しようとしている事柄にとって都合の悪いパターンが現れるのでない限り*2毎年のデータを表示したほうがいい。

*1:要するに、2つの系列に共通のパターンが見られるということを示せればいいのだから、基準年のデータ位置を揃えなくても、変化の幅がだいたい同じくらいの範囲に収まるようにすれば足りる。

*2:もちろん、そのような都合の悪いパターンが現れたなら、主張を撤回または修正しなければならない。