目的と手段の転倒

航空会社による不採算路線の廃止や減便が続く。昨年には国内線だけでもJALが12路線の運休と4路線の減便を、ANAが8路線の運休と14路線の減便を発表した。地方活性化には欠かせない空港だが、今後は“飛行機が飛ばない”空港が出てくる可能性もある。

「地方活性化には欠かせない空港」という表現がどうにもひっかかる。もし、地方活性化に空港の存在が本当に欠かせないのだとすれば、空港のない地方は活性化が不可能だということになる。他の条件が同じなら空港がないよりあるほうが地方は活性化する、という程度のことなら言えるかもしれない*1が、空港がなければ地方活性化は望むべくもない、というほどのことはないだろうと思う。
そんなもやもやを抱えながら読み進めていくと、こんな文章が出てきて目をむいた。

航空会社にも地方空港を活性化しようという動きは出始めている。減便や廃止を避け、地方路線の採算性を高めるため、JALは今年から、ANAでも2013年から、新たに小型ジェット機を導入する。路線に応じた機材を使い、多路線・多頻度化を図るのだ。

【略】

地方空港が必死で減便や廃止を食い止める背景には、2010年に完成する羽田空港新滑走路の存在も大きい。滑走路が完成すれば国内線の発着枠も増える。この増便が、地方空港には大きなチャンスなのだ。だが「活気のない地域には、航空会社も路線や便数を増やしにくい」(運輸政策研究所の内田傑氏)との指摘もある。地方空港や自治体に今、問われているのは観光資源を発掘・振興した地域力の向上だ。

地方を活性化するための手段だったはずの地方空港が、目的になってしまっている。地方空港を存続させるために地域力の向上が求められるというのは本末転倒だ。
路線の廃止や減便を防ぐために資金を投入するということが絶対悪だとは言わないが、空港を維持するメリットがどの程度のものなのかをきちんと見積もった上でやるのでないと後でまずいことになるのではないかと思う。まあ、こんなことは素人が口出しするまでもなく、関係者ははなから承知しているのだろうが、空港のメリットを客観的に算定することの困難さや、過去に投資した莫大な費用がすべて無に帰すことへの抵抗など、さまざのな要因が絡み合って、なかなか合理的に割り切ることができないのだろう。
このような構造は空港に限ったことではない。世の中、なかなかうまくいかないものだ。うまくいかないのが世の中というものだ、と言ってもいいかもしれない。諦めてなるようになるのを看取るのがいいのか、それとも何か策を考えるほうがいいのか、それすらもわからないというのは、なんとも残酷なことだと思う。

*1:ただし、ストロー現象があれば話は違ってくるだろう。