二者択一は「二元論」とは違う

公権力が法によって「すべての」他者危害を規制するのであれば、他者危害をどうするかは公権力にまかせることができますから、「法か、あるいは道徳か」の二元論が成りたちます。

【略】

公権力の介入を最小限のものとするのであれば、同時に法規制からもれた他者危害を積極的にとりあげて問題にしていかねばならない。法規制か道徳かの二者択一ではなく、自律的に他者危害を問題視して議論をしていく私的自治の圏域が必要であると考えます。

「二元論」というのは、世界の基本的な構成原理が二つあるという考え方のことなので、ここで批判されているような考え方のことを「二元論」という言葉を用いるのは変だと思う。
ところで、「他者危害の禁止」というのは、自由主義社会における基本的な道徳的原理のことだと理解しているのだが、違うのだろうか? ここでは、どうもそれが道徳を超越した別レベルの規範として捉えられているような印象を受けたのだが。