一迅社文庫2009年6月刊行全4冊の感想

はじめに

今回は前置きなし。例によって読んだ順に感想を書く。

白銀のローレシアン2

白銀のローレシアン (2) (一迅社文庫)

白銀のローレシアン (2) (一迅社文庫)

今月は新刊が4冊あるので、読む順番を間違えて難物から取りかかったりすると読書意欲が萎えて読了までに時間がかかる恐れがあった。そこで、作者名を見ただけで安心できるこの作品から読むことにした。とはいえ、シリーズ前作『白銀のローレシアン―願う少女と迷い糸』が出たのは昨年9月のことなので、少し間があいてしまい、前作がどんな内容だったのか、すっかり忘れてしまっていて*1、やや不安もあった。もっとも実際に読んでみると、主要キャラクターの設定や今巻を読むのに最低限必要な前巻のプロットなどがきちんと説明されていたため、この不安は杞憂に終わった。
事前に想像していたのに比べると、ラブコメ要素はやや控えめで、戦闘シーンが多かったが、それでもローレシアンのツンデレ描写などはきちんとツボを押さえている。主人公とローレシアンの関係が中途半端なままなので、その点はやや不満だが、それは次巻以降に期待することにしよう。

勇者と探偵のゲーム

勇者と探偵のゲーム (一迅社文庫)

勇者と探偵のゲーム (一迅社文庫)

上原りょうの次は大樹連司……って誰?
調べてみると、ガガガ文庫でノベライズを何冊も出している人らしいが、これまでノーチェックだった。一説では、某ニート探偵を車椅子に座らせた人の別名*2だということだが、その説の当否はともかく、少なくとも『勇者と探偵のゲーム』の探偵は車椅子にも安楽椅子にも座っていない。というか、ほとんど出番がない。タイトルでは「勇者」と「探偵」が併記されているが、実際には「勇者のゲーム(探偵つき)」という感じだ。
作中のメインアイディアはチェスタトンボルヘスに通じるものなので、単に「密室殺人」「連続殺人」という言葉だけ挙げるのではなくて、もうちょっとミステリ的ガジェットを盛り込めば、面白いミステロイドになったのではないかと思うのだが……。

交錯都市―クロスシティ―

交錯都市-クロスシティ- (一迅社文庫)

交錯都市-クロスシティ- (一迅社文庫)

前作『黒水村』に比べるとホラー色は薄れて、とぼけたユーモアのある*3サスペンス活劇という感じだった。ホラーはあまり好みではないのだが、特に抵抗なく読めました。
ライトノベルの主流にはなり得ないジャンルだし、コンスタントに出し続けるのは商業的に難しいのではないかと思うが、一迅社文庫の独自性をアピールするためにも、この系統の作品をこれからも時折は出してもらいたいものだ。

宇宙をかける少女 上巻

宇宙(そら)をかける少女〈上巻〉 (一迅社文庫)

宇宙(そら)をかける少女〈上巻〉 (一迅社文庫)

最後はノベライズ。原作のアニメは見ていないのでどの程度の異同があるのかはわからないが、いかにもサンライズっぽいお話だと思った。
瀬尾つかさの小説を読むのはこれが初めて。ラノサイ界隈ではわりと評判のいい作家のようだが、ノベライズでは評価のしようがない。機会があればオリジナル作品も読んでみたいものだが……さて、その機会があるかどうか。
ところで、どうでもいい話だけど、「つかさ」という名前のライトノベル作家って結構多いような気がしませんか?

おわりに

今回は締めくくりなし。さっさとおしまいにします。

*1:主人公の特殊能力のことすら忘れていた! 我ながら記憶力の減退が恨めしい。

*2:検索避けのためわざと回りくどい書き方をしました。すみません。

*3:特に松本清張の某長篇を思わせるラストシーンには笑わされた。