ライトノベルサイト杯の部門別制限廃止に関する若干の所見
2009年上半期ライトノベルサイト杯 開催のお知らせ - 平和の温故知新@はてなにより、2009年上半期ライトノベルサイト杯が正式に始まった。従来は「新規作品部門」と「既存作品部門」それぞれ最大5作品ずつ投票できるという方式だったが、今回は部門別の投票数制限が廃止され、両部門あわせて10作品まで投票できるようにルールが変更されている。この件については、以前、軽く言及したことがある。
これって、従来の「新規」「既存」の2部門を廃止してトータルで10タイトルを選ぶ方式に切り替えた、っていうのと論理的には同じことですよね?
これは少し言葉が足りなかった。各部門ごとの投票数上限を廃止しても部門別に集計する限りは、部門そのものを廃止するのと同じではない。上の「論理的には」の前に「各参加者の選択可能性において」という文言を補って読んでもらいたい。
要するに、対象作品を「新規」「既存」2部門に分けた上で、各部門からあわせて10作品を選んだものを集計するのと、対象作品全体から10作品を選んで、「新規」「既存」2部門別に集計するのとでは、論理的には同じこと*1だ、ということ。
前回までは「新規」「既存」各部門のに含まれる作品は独立に評価された。それぞれの部門において順位付けが行われるが、「新規」「既存」の両部門の集計結果をもとに「総合」部門を作ることはできなかった。いや、やってできないことはないかもしれないが、もともと土俵が違うものを単純にあわせても仕方がないことは明らかだったから、誰もやらなかった*2。
しかし、今回は違う。新規作品も既存作品も「あわせて10作品以内」という共通の枠の中で選択されるのだから、とにかく得票数が最も多い作品が「総合1位」というふうに評価されることは避けようがない。そうなると、ランキングの独り歩きを助長することになるのではないか。
もっとも、今回の変更は必ずしも悪いことばかりではない、とも考えられる。ひとつの大枠の中から任意に10作品を選ぶことが可能になったため、集計時にさまざまな基準で部門分けをすることが可能になったからだ。たとえば「角川グループ部門」「女性作家部門」「ネコ耳部門」など。集計基準の複数化により、ランキングの独り歩きのもたらす弊害を少しでも抑えることができるのなら結構なことだと思う。