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出版奈落の断末魔―エロ漫画の黄金時代

出版奈落の断末魔―エロ漫画の黄金時代

この本*1は主としてエロ漫画業界の状況*2を扱ったものだが、そっち方面に興味がなくても、出版業界に関心のある人には何かと参考になるのではないかと思う。業界人を夢見ている人には特に。出版不況と言われるようになって久しいが、単に売り上げ部数や出版社の決算などの公表資料だけを見ていたのではわからない、業界で生きる人々の赤裸々な姿を徹底的に容赦なく、しかし簡潔に描く筆致には鬼気迫るものがある。足掻いても足掻いても無明の闇に沈み込んでいく怖さ*3。まったく畑違いだが『驚愕の曠野』を連想した。文中で言及されている固有名詞*4のいくつかについて話せば長くなる感慨もあるのだが、読書感想文の枠を大幅にはみ出すため割愛。最後に漫画屋ホームページにリンク。

*1:「出版奈落の断末魔」と「エロ漫画の黄金時代」のどちらがメインタイトルでサブタイトルなのかがわからない。背表紙をみると「エロ漫画の黄金時代」のほうが大きく書いてあるが、奥付では逆になっている。意図したわけではないだろうが、往年のビニ本を思わせるいかがわしさが漂ってくる。

*2:初出一覧がついていないのではっきりしたことはわからないが、どうやら「記録」という雑誌の連載記事をまとめたものらしい。ところどころに2008年段階での加筆があるが、原文は2000年頃に書かれたものか?

*3:もっとも、この本は怖いばかりではない。一定年齢以上の人には懐かしさも感じられることだろう。

*4:漫画家や漫画雑誌など。