車でたま駅長を見に来る輩はどの程度ダイヤを整備すれば電車を使うようになるというのか?

貴志駅は沿線住民が通勤や通学に使っており、駐車場はない。同社は5駅離れた伊太祈曽(いだきそ)駅前駐車場(1日200円)に車を止めて貴志駅まで電車で乗り継ぐパーク・アンド・ライドを勧めているが、利用は低調だ。市政策調整課は「放置できないが、鉄道会社が駐車場を整備するわけにもいかないだろう」と、駅から徒歩で約15分の市管理の河川敷に車を誘導する看板を今春立てた。

貴志川線を研究する和歌山大経済学部の辻本勝久准教授(交通政策)は、「分散する和歌山の観光地を効率的につなぐ公共交通機関がない。車の移動が合理的だと観光客は考えるだろう。パーク・アンド・ライドなどのPRを徹底するしかない」と話す。和歌山電鉄は「たまには電車で会いに来てほしい」と訴えている。【宮嶋梓帆】

wackunnpapa 鉄道 鉄道で来い,と言うなら,それなりに乗り継ぎに配慮してダイヤを整備して欲しい. 2009/09/04

元記事には特に感慨はないが、我が目を疑うようなコメントを見てしまったので取り上げることにした。
なぜ、我が目を疑ったのかを説明する前に、簡単に和歌山電鐵貴志川線の紹介。

さて、よろしいでしょうか?
上で引用したコメントの「乗り継ぎ」が、

  1. 元記事で紹介されている伊太祁曽駅の駐車場に車をとめて貴志川線に乗り継ぐこと
  2. 阪和線その他の鉄道から和歌山駅貴志川線に乗り継ぐこと

のどちらを指しているのかこれだけではわからないのだが、仮に前者だとすれば乗り継ぎに配慮したダイヤの整備というのがどういうことなのかが理解できない。というのは、自家用車には運行ダイヤがないから車の到着時間にあわせて電車を運転することができないからだ。従って、コメントで言われている「乗り継ぎ」は合理的に解釈できるものとみなす限り、和歌山駅でのJRからの乗り継ぎを指すものだと思われる。
では、和歌山駅での乗り継ぎ状況はどうか。貴志駅を訪れる客の多い土曜日の日中のダイヤをみると、午前9時台に和歌山駅に到着する紀州路快速は16分、36分、58分の3本だ。10時台は17分、31分、57分、11台は16分、31分、58分で、このあと、12時台から16時台まで、16分、34分、58分となる。一方、貴志川線和歌山駅発車時刻は、9時台が09分と45分*2、10時台から15時台までが20分と50分、16時台が23分と56分となっている。
たとえば12時16分に和歌山駅に到着した場合、同駅12時20分の貴志川線に乗ることが可能だ*3。34分着だと50分発まで16分の待ち時間、58分着だと20分発まで22分の待ち時間となる。電車の乗り継ぎに22分も待たされるのはたまらない、と都会人なら不平を言うかもしれないが、30分に1本しか走っていない/走らせることができない単線鉄道ならこの程度の待ち時間は仕方がない。阪和線の電車がホームに到着した瞬間に貴志川線のホームから電車が出て行くのが見えるといったことは基本的にはない*4のだから、よく工夫されたダイヤだと言えるだろう*5
鉄道にも造詣の深いG.C.W.氏のことだから、よもや時刻表の確認もせずにダイヤの整備を求めているわけではないと思うのだが、さて、貴志川線のダイヤをどう配慮して整備すれば、今は車で貴志駅を訪れているような輩*6が多少なりとも電車にシフトをすると見込まれるのか、全く理解に苦しむ。
これが上で「我が目を疑う」と書いた理由だ。
……と書いたところで気がついたのだが、もしかすると上のコメント中の「ダイヤ」は単にダイヤグラムのソフト面のみを指すのではなく、ダイヤ編成の前提となる路線設備や車輌などを含めた広い意味で用いられているのかもしれない。それなら、たとえば交換設備の増設による列車の増発や、1500Vへの昇圧によるスピードアップ、あるいは長年「あんなこといいな、できらいいな」と言われ続けている南海和歌山市駅への乗り入れなどの手段により、他地方から電車で貴志駅を訪れる客の便を向上させることは不可能ではない。
ただ、やっぱりそれでも輩は輩、電車に乗ってたま駅長を見に行こうとは思わないのではないか。
これはただの想像であり、裏付けとなる確かな証拠はどこにもないが、想像力に乏しく理性的な判断力にも不自由している輩どもは電車が便利になっただけでは、自家用車から電車に乗り換えようなどという気を起こさないだろうと思われる。彼奴らを動かすためには、飴よりも(以下、見苦しい罵詈雑言のため自主規制)。

*1:昔は大池遊園、甘露寺前の両駅で交換可能だったが、今はどちらも交換設備がない。

*2:ほか伊太祁曽止まりの区間列車1本あり。

*3:乗り換えに手間取らなければ、阪和線から貴志川線への乗り換えは1、2分でできる。ただし、貴志川線1日乗車券を窓口で買う時間ロスを考えるとあまりこの乗り継ぎはお薦めできない。

*4:関西圏のJRは首都圏ほどではないにせよ、よくダイヤが乱れるので、到着時刻が遅れた場合にはそのような事態も発生しうるが、1、2分程度の遅れなら貴志川線のほうが接続待ちするので、寸差で乗り逃がすことはあまりない。

*5:和歌山線紀勢本線、それに阪和線の特急・各停との接続の話は抜きにしよう。また、貴志川線から阪和線への乗り継ぎの検討も省略する。

*6:輩のニュアンスについてはここを参照のこと。