ふたつのMWV

ずっと前に買ったメンデルスゾーン交響曲全集に含まれていた「弦楽のための交響曲*1を聴いているときに、ふとメンデルスゾーンの作品の全体像が知りたくなって、メンデルスゾーンの作品一覧 - Wikipediaにアクセスしたところ、次のような記述が目に留まった。

2009年にラルフ・ヴェーナーによる学術的作品目録が出版され、作品主題目録番号「MWV」が定義された。

あれ? 「MWV」ってモルターの作品に付せられた番号ではなかったろうか?
ヨハン・メルヒオール・モルター - WikipediaにはMWV番号への言及はなかったが、ドイツ語版にはわずかながら記述があった。

Das etwa 600 Einträge umfassende Verzeichnis der Werke Molters (MWV) von Klaus Hafner gibt Auskunft über die einzelnen Kompositionen.

こっちのMWV番号がいつ頃考案されたものなのかは知らないが、何年か前に買ったモルターのCDにMWV番号が付番されていたので、2009年より前だということは確かだ。
ところで「作曲家名の頭文字-Werke-Verzeichnis」という番号はBWVが最初らしい。大バッハ没後200年の1950年に成立したものだそうだから、今から60年前のことだ。その後、主にバロック時代の作曲家の作品に「○WV」という番号がつけられるようになった。

バッハと同様に、ヘンデルはHWV、テレマンはTWV、シュッツはSWV番号を用いており、バッハ作品番号の影響力をうかがわせる。

このほか、すぐに思い浮かぶのはブクステフーデの「BuxWV」だ。ブクステフーデもバッハと同じく「B」から始まる名なので重複を避けるために「ux」を補ったのだろう。同様に処理するならメンデルスゾーン作品主題番号は「MenWV」と表記されるべきではないかと思うのだが、そうなっていないのは、やはりメンデルスゾーンとモルターの知名度の差ゆえなのだろうか。なんとなく釈然としないものを感じたけれど、モルターとメンデルスゾーンは別の時代の人だから、同じ「MWV」でも混乱が生じるおそれが少ない*2ので、これはこれでいいのかもしれない。

*1:むしろ「弦楽のためのシンフォニア」と表記したほうがいいような気もして少し迷ったが、あまり深く考えても仕方がないのでウィキペディアの項目見出しに従った。

*2:これに対してブクステフーデとバッハは同じ時代を生きたということと、前者から後者への強い影響関係があることなどから、作品番号が同じ表記では具合が悪いことは明らかだ。