「みすゞ潮彩」は美祢線を通りませんが、何か?

美祢線は、県央部を南北に結ぶ路線で、観光業を今後の産業振興の切り札にしたい県は、山陽新幹線厚狭駅と県の代表的な観光地の萩・長門を結ぶ役割も重視している。

山口県のことはよく知らないので、当初「県の代表的な観光地の萩・長門」の意味がよくわからなかったが、しばらく考えて、ここでの「長門」が旧長門国のことではなく長門市を指すのだと気づいた。へぇー、長門市って山口県の主要な観光地だったのか。津和野のほうが有名だと思うけど。あ、津和野は島根県か。
それはさておき。
美祢線には昔一度だけ乗ったことがある。大嶺支線が廃止になる直前のことだから1997年だ。特に沿線風景に特徴があったという記憶はない。その後、山口線山陰本線に乗る機会は何度かあったものの、美祢線再訪はまだ果たしていない。別にもう一度乗りたいという気にもならない。
山口線にはSL「やまぐち」号があり、山陰本線には山陰観光列車みすゞ潮彩があるが、美祢線にはそのような観光列車は走っていないし優等列車もない。新幹線の駅と観光地を結んでいるといっても、美祢線に乗る観光客は少ないのではないだろうか。そもそも、厚狭駅には「こだま」しか停車しないし。
そう考えてみると、県が美祢線を観光振興の観点から重視しているという話は俄かに信じられない。県の担当者の言い間違いか記者の聞き間違いか*1、いずれにせよ美祢線山口県の観光戦略上重要な役割を担うとは考えにくい。
鉄道は一度廃止されたら、よほどの事がない限り復活することはない。だから、今ある路線を遺す必要があるのだ……という理念は理解できるのだけど、ローカル線存続の要はよそからやってくる観光客などではなく、その地域の住民であることを忘れてはならないと思う。村田弘司・美祢市長は年間何回美祢線に乗っているのだろうか? 今村武久・美祢市商工会長は? 高校生の河田達也君や古谷花菜さんは高校を出ても美祢線沿線に住み、鉄道を利用する気はあるのか? タクシー運転手の岡村春樹さんは美祢線存続のために何か行動を起こすのか?
今回の災害復旧後、どれだけの客が美祢線に戻ってくるのだろうか。災害前よりも増えるとは考えにくいが、これ以上減るようならやがて廃線になることは間違いないだろう。JRが撤退した後、両備グループが後を引き受けてくれるのかどうか、今から考えておいたほうがいいかもしれない。

*1:あるいは別の可能性もあるが、本題から外れるので省略。