南国のイーハトーブ
紀伊半島の山奥、和歌山県日高郡日高川町に長さ1646メートルの藤棚がある。日本一の長さだということだが本当かどうかは知らない。この町はもうひとつ、焼き鳥世界一でも知られているが、この記録はちょくちょく抜かれている*1。それはともかく、一度はこの藤棚を見に行きたいと思っていたところ、今年ようやく夢がかない、藤棚のあるみやまの里森林公園を訪れることができた。
予想していたよりも高低差が激しいが、急な階段は帰路で、登りのルートはごくふつうの藤棚がだらだらと続くゆるやかな坂道だった。
途中、異様に傾いた建物を見つけた。
これは遊園地によくあるビックリハウスの類で、ここでは「ミステリーハウス」と呼ばれているらしい。しかし、それにしてもなんでこんなものを森林公園の中に作ろうと思ったのだろう?
藤棚の続く坂道をようやく登り詰めて、後ろを振り向いてみた。
頂上の展望台からは麓の集落が一望できる。この辺りは平成の大合併以前は美山村という村で、国勢調査によると、2000年の美山村の人口は2165人、2005年の旧美山村の人口は2106人となっている*2。
この写真の中央の少し右寄りにある大きな建物は体育館で、その後ろにオレンジ色がかった小さな建物が見える。この建物こそ、知る人ぞ知るイハラ・ハートショップだ。さて、これはいったい何の店でしょう?
正解は次の写真で。
書店でした。
書店といってもいろいろある。ヴィレッジヴァンガードも書店だし、信長書店も書店だ。では、人口2000人の村に位置するイハラ・ハートショップはどのような書店なのか? 実際に店内に入るまでは、失礼ながら書店とは名ばかりの雑貨屋ではないかと思っていた。さすがにこの人口では書店を維持することは難しいだろう、と。
だが、店の中に一歩足を踏み入れると先入観は見事に払拭された。なるほど、確かに雑貨も扱われているが、この店はまさしく「書店」の名にふさわしい店だ。狭いながらも各種ジャンルの本が一通り揃っており、品揃えにもセンスが感じられる。書店のセンスの有無はなかなか言葉では説明できないので、本当なら棚に並べられた本を写真に撮ってお見せすればいいのだけど、さすがに一介の客がそういうことをするのは気がひけるので店内の写真は1枚も撮っていない。かわりにイハラ・ハートショップ - Google 検索にリンクしておこう。
せっかく来たのだから何か本を買ってみようと思い物色したところ、なぜか都築響一の本が置いてあった。名著『珍日本紀行』をはじめ、ちくま文庫が数冊あったほか、『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』という本が置いてあった。
- 作者: 都築響一
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 2008/02/28
- メディア: 単行本
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ところで、イハラ・ハートショップの店長も本を書いている。
- 作者: 井原万見子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2008/12/19
- メディア: 単行本
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さて、イハラ・ハートショップを訪問したことをきっかけに、書店巡りについて、あるいは1冊の本との偶然の出会いについて、さらにネット書店が読書家に与える影響についていろいろと考えてみたのだが、例によってまとまりのない思いつきの羅列になるので省略。しまりがないが、今日はこれにておしまい。
*1:日高川町焼き鳥世界一のページ参照。
*2:2010年国勢調査の速報値はもう公表されているが、旧美山村の人口データを見つけることができなかった。
*3:イハラ・ハートショップに置いてあったのは第2版だった。
*4:ついでにもう1冊、『ヨーロッパの世界遺産〈1〉イタリア・ギリシア (講談社プラスアルファ文庫)』という本も買った。