西宮のアライグマ「救助」の謎

西宮市消防局が困っているアライグマを「救助」した、という記事が朝日新聞に出ていた。

兵庫県西宮市の住宅街で22日、川からはい上がれず、助けを求めるようなまなざしを向けているアライグマを通行人が見つけた。

市消防局から消防車2台8人が出動。体長約60センチの成獣で、大勢の人が見守るなか、網の中に追い込まれ、30分ほどで捕獲が完了した。

アライグマは見た目と違って気性が荒い動物。しかし騒動を反省したのか、保護された先の甲子園署では暴れることもなく、しょんぼりした様子という。

この記事を読むといくつかの謎が浮かび上がってくる。

市の消防がなせアライグマを「救助」したのか?
アライグマの「救助」は消防法消防組織法に規定されている消防の任務から大きく逸脱している。というか、法律を持ち出すまでもなく、消防車2台も出してアライグマを「救助」するというのは、どう考えてもおかしい。何か、アライグマを「救助」せざるを得ない事情でもあったのだろうか?
アライグマの捕獲・運搬にあたって、どのような法的整理をしたのか
アライグマを勝手に捕獲するのは鳥獣保護法*1第8条違反となる。ただし、これにはいろいろと例外もあって、先日、アライグマは「狂犬、奔馬の類等」 - 一本足の蛸で説明したとおりだが、今回の事例ではどういう手法を使ったのかがよくわからない。はてなブックマーク - asahi.com(朝日新聞社):アライグマ、川底から「助けて」 救助され神妙な顔? - 社会で、負傷した動物の保護は「捕獲」ではない、と書いている人がいるが、傷病鳥獣救護の場合でも鳥獣保護法第9条の許可が必要だ。鳥獣保護法施行規則*2第5条第2号を参照のこと。また、合法的に捕獲したアライグマであっても、外来生物*3第4条で運搬が禁止されている。外来生物法施行規則*4第2条第11号によっているのか? はてなブックマーク - asahi.com(朝日新聞社):アライグマ、川底から「助けて」 救助され神妙な顔? - 社会では、警察法第2条第1項に言及している人がいるが……うーん。
で、結局このアライグマはこの後どうなったのだろう?
記事中の「甲子園署」というのを誤解して、最初、「甲子園消防署」という組織があるのかと思ったが、甲子園警察署のことだろう。遺失物として届け出たのだろうか? 警察もやっかいなものを抱え込んでしまったものだ。朝日新聞の記者が去ったあとこっそり殺処分したのか、それともアライグマの飼養許可を受けている人か機関に引き渡したか、それともまだ警察で飼っているのだろうか。

……と、いろいろ謎が尽きない事件なのだが、それはともかく西宮市といえば皆さんよくご存知の兵庫県立西宮北高等学校の所在市だ。でも北高はたぶんこの件とは関係ない。もうひとつ西宮市といえば忘れてはならないのは……いや、別に忘れてもいいのだけど、日本熊森協会の所在市でもある。今回の件については特に何もコメントは出していないようだが、参考のために旧サイトの過去の記事にリンクしておこう。