世の中にはいろいろな同心がいるらしい

双子同心 捕物競い (講談社文庫)

双子同心 捕物競い (講談社文庫)

知人に「何か軽く読めて面白い時代小説を」とリクエストして貸してもらった本。さくさく読めた。
同じ著者の『公家さま同心 飛鳥業平』を以前読んだことがあったのだが、奥付の著者紹介をみるまで同じ人だと気づかなかった。『公家さま』のほうはシャーロック・ホームズにちなんだくすぐりがいくつかあって印象に残ったのだが『双子』のほうはさほどミステリ色が強くないため、あまり似ているとは思わなかったのだ。
……と書いたが、『双子』の最後のほうで、とある人物の台詞にダブルミーニングが仕込まれていて、全く油断して読んでいたものだから、真相が明かされたとき軽く驚いた。
最近、書店の時代小説の棚を眺めると「××同心」というタイトルの作品が目立つ。「さすがにそれはないだろう」と思うのもあって、『公家さま』などその典型なのだが、『双子』のほうは特に違和感がなかった。だが、考えてみれば、江戸時代の社会制度で双子の両方が同心になるということはふつう考えられないわけで、その「常識」に対して作者がどのように挑戦して克服しているのかも読みどころのひとつかもしれない。