これからの「合法ツアーバス」の話をしよう

関越道のバス事故のニュースをみて、ふと思いついたこと。
この事故を起こしたバスは、「高速ツアーバス」と呼ばれる運行形態のバスだ。「ツアー」というのは旅行のことだが、パック旅行のメニューの一部にバスでの移動が組み込まれている「バスツアー」ではなくて、バスを用いた輸送サービス以外にはほとんど何もない。従って、実態としては長距離路線バスとほぼ変わるところはない。

で、思いついたことというのは、この「高速ツアーバス」の手法は偽装請負に似ているのではないかということだ。

旅行会社と観光バス会社との契約関係に何らかの偽装があると言いたいわけではない。「ツアー」という文言と実態とのずれが「請負」ないし「委託」という文言と実態とのずれに似ているのではないかということだ。
今回の関越道バス事故以前から「高速ツアーバス」は問題視されていた。先日、国土交通省が「バス事業のあり方検討会」報告書を公表したばかりだ。この種の検討会から法改正を経て運用開始に至るまでには多くの関門があり、場合によっては報告書の主旨が骨抜きにされることもあるが、この件についてはどうだろうか?
さて、この「高速ツアーバス」について、関連業界とも監督官庁とも特に関係のない人は、さしあたりどう対応すればいいのか? 基本的には何もしなくていいのだが、それでは漠然としているので以下「しなくていいこと」をいくつか掲げる。

  • 鉄道・飛行機・高速路線バスなどに比べて費用が少なくてすむからといって、「高速ツアーバス」に乗ること。
  • 旅行を企画している人に、「高速ツアーバス」という安い手段があるという情報を提供すること。
  • 高速路線バスと「高速ツアーバス」の一本化に向けた動きに対して、規制強化であり選択の自由の侵害だとして反対すること。

「しなくていいこと」だけでは物足りないという人には、次のことを勧めたい。高速路線バスと同様の運行形態であるのに道路運送法の規制を受けず、また、実質的には「バスツアー」の要素が稀薄であるにもかかわらず、旅行業法の適用を受けて合法的に運行している、この種のバスのことを、今後、「合法ツアーバス」と呼ぶことを。

追記

「バス事業のあり方検討会」には「合法ツアーバス」業界の人も委員として参加しており、報告書の行間からえも言われぬ香気が醸し出されている。「よくここまでまとめたなぁ」と感心した。
本文の書き方では、「バス事業のあり方検討会」報告書を全面的に支持しているかのように読まれるかもしれないが、交通事故の危険防止という観点からみればちょっと危なっかしいと思われる提言もないではない。ただ、「合法ツアーバス」と高速路線バス(報告書の用語では「高速乗合バス」)の一本化という基調には賛成したい。