久しぶりにライトノベルでも

昔はライトノベルをよく読んでいた*1ものだが、数年前からほとんど読んでいない。すっぱり縁を切ったというわけではないのだが、ふだんから新刊をチェックすることはなくなったし、何かの弾みで本を買っても積ん読状態になって、結局ため息をつきながら古本屋に売ってしまうという有様。今年読んだライトノベルは、『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI』1冊きりのはずだ。これはタイトルのインパクトに惹かれて読んだのだが、正直読み進めるのが辛かった。
今日読んだ『俺の教室にハルヒはいない』もある意味インパクトの強いタイトルだが、それだけで読む気になったわけではない。たぶん作者が別の人だったなら手に取ることすらなかっただろう。
カバー見返しの著者紹介文には「帰ってきたライトノベル作家」と書かれているので、何年かブランクがあったのだろうが、先に書いたとおり最近の新刊はチェックしていないので、具体的なことはよくわからない。新井輝 - Wikipediaのリストをもとに、前作が何年に発売された何という作品なのかを調べようかと一瞬思ったものの、別にそんなことをしても意味がないと思い直した。『ROOM NO.1301』の作者の新作が出た、それだけでいいではないか。
ROOM NO.1301』は今はなき富士見ミステリー文庫のいわゆる「LOVE寄せ」以降の代表的なシリーズのひとつだ。確かレーベルの再末期まで巻を重ねていたはずだが、全部は読んでいない。しかし、昔、ライトノベルを楽しく読んでいた頃の懐かしい思い出のひとつではある。その作者が、もうひとつの忘れがたいライトノベルシリーズ*2への言及を含む*3新作を書いたのだから、これはまあ一読の価値があるだろうと思った次第。
最初のページを開くと、いきなりあの有名な台詞が出てくる。

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」

この後、件の作品では宇宙人やら未来人やらが出てくる周知の展開が待っているわけだが、『俺の教室にハルヒはいない』ではタイトルで断定されているとおり「ハルヒはいない」のだから、宇宙人や未来人が出てくるはずもない。そのかわりに、純粋で健全な中高生男子の願望を充足してくれるような美少女ないし美女キャラが次から次へと登場する。パロディでもパスティーシュでもなく、本歌取りと呼ぶべきところだろう。
特に大きな事件が起こるわけでもないのに、いったん読み始めたらページを繰る手が止まらず、あっという間に読み終えてしまった。ふう、面白かった。
この小説の面白さを細かく分析するつもりはないが、ワナビー心をくすぐる仕掛けには触れておきたい。何の取り柄もない平凡な一般人が多くのファンを持つ業界人と知り合いになるが自分では知人がそんな凄い人だとは知らない、というシチュエーションは、ある種の人々の胸に強く響く。ときには古傷をさっと撫でることもあるだろうが、それもまた心地よい痛みだ。
物語は1冊では終わらない。あとがきの次のページには次巻予告が掲載されている。だが、昔を懐かしむのにはこの1冊で十分という気もする。続きを読むかどうかは2巻が出てから考えることにしよう。

*1:といっても月にたかだか5冊程度。10冊も読むことはほとんどなかったと思う。

*2:そういえば、こちらも全部は読んでいない。

*3:タイトルを見ただけではパロディかパスティーシュか、あるいはオマージュ作品なのかといったことは全くわからなかった。