暴悪忿怒産
- 作者: 牧野知弘
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2013/09/02
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (2件) を見る
だが、実際に読んでみると内容は堅実だった。不動産証券化の流れを一方では「不動産の民主化」と評価しつつも、証券化された物件を「バーチャル不動産」と呼び、その評価や取引を「エクセルシート上の数字のお遊び」ないし「エクセルシート上の妄想」*1と喝破している。長年不動産業界に身を置いた著者が、金融商品と化した不動産を相手にマネーゲームに興じる金融業界の人々を醒めた目でいるのがよくわかる。
報道発表資料 - 国土交通省をみると、8月27日の報道発表資料:平成25年第2四半期主要都市の高度利用地地価動向報告〜地価LOOKレポート〜について - 国土交通省、8月30日の報道発表資料:建築着工統計調査報告(平成25年7月分) - 国土交通省、9月4日の報道発表資料:不動産価格指数(住宅)(平成25年4月分速報) - 国土交通省ともに、不動産市場の好況を伝えている。だが、それが実需に裏打ちされ、あるいは実需を牽引する力を持つものかどうか、今の段階では判断ができない。
いずれにせよ、好況の恩恵を受けているのは大都市圏と一部の地方都市だけで、地方圏の大部分の地域ではこれからもずぶずぶと経済の地盤沈下が進むことが予想される。主要都市を重視する統計だけでなく、9月20日頃に公表されるはずの都道府県地価調査の結果も注視したい。
*1:本題とは関係ないが、この本で「エクセルシート」という語が多用され、どちらかといえば否定的なニュアンスが含まれているのが興味深い。