都市と過疎地と人口減少

昨年末最後の記事は杉並区の年齢不詳者の多さをネタにしたものだった。
今年最初の記事も人口の話題から。
こんなまとめ記事を読んだ。

人口減少下の日本ではこれまでの社会インフラの維持ができないので、何らかの形で「選択と集中」が必要となる、という主張はよく見聞きするのだが、ではどのような「選択と集中」が望ましいのか、という話になると論者によって意見が異なる。それでも、多少ともまともな論者であれば、都市の中心部と郊外の問題と、都市と農山漁村の問題をわけて論じる*1ものだが、このまとめ記事を読んだ限りでは、そのような区別ができているようには思えない。
このまとめ記事の出発点は「道路維持には金がかかる」という認識だが、これからの日本で負担が増していくのは何も道路インフラの維持だけではない。たとえば、こんな記事もある。

この記事の中でも紹介されている杉並区と伊豆町の連携の事例を見るにつけ、2010年国勢調査の杉並区の年齢不詳者率13.8%という数値が重く響いてくるようにも思えるのだが、それはともかく大都市圏の猛烈な高齢化問題はベストセラー『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』でも取り上げられているのでご存じの方も多いだろう。高齢者の扶養には金がかかる。これまでに整備が進んでいた地方ではさほどではないが、首都圏など大都市では大変なことになる。では、都市住民の社会保険料を何倍にもしないと不公平だ、ということになるのか?
ここには、税や保険料などの負担の「公平性」とはなんぞや、という難しい問題がある。あまり深入りすると火傷をするので、ここでは、単に負担と受益のバランスのみから受益性を論じるのでは十分ではない、とだけ言っておくことにしよう。
ところで、先ほどリンクした高齢者の増加で、首都圏はある時突然ダウンをする(システムエラー) - 未発育都市は、大都市の高齢化問題についてはよいまとめだと思うのだが、コンパクトシティに関するくだりの評価は留保しておきたい。同じ人の「コンパクトシティ」論は絵に描いた餅、偽装された因果関係に縛られた楽園にすぎない - Togetterまとめについてコンパクトシティと除雪費 - 一本足の蛸で議論が根本的にナンセンスであることを指摘したが、この人がコンパクトシティについて語るときにはそのまま鵜呑みにしないほうがいい。
閑話休題
大都市圏と地方について、先ほどこんなツイートを見かけた。

これに対して、こんなコメントをエアリプライ*2でつけておいた。

今から思えば、鳥取と東京をつなぐ道なら大阪か京都も通るはずなのに東京以外の大都市圏を無視するのはいかがなものか、というような思いもあるのだけれど、東京圏と他の大都市圏の関係まで取り上げると収拾がつかなくなるので、やめておこう。
最後に、なんとなく撤退の農村計画 - 日本の過疎地域・限界集落から考える人口減少下での国土の戦略的再編と国民的経営にリンク。
最後の最後にショッピングモールより、まずは自動車、国道だ――ロードサイドの精神性について - シロクマの屑籠シロクマ氏のロードサイド批判は「金持ちの自慢話」にすぎない - 未発育都市はてなブックマーク - シロクマ氏のロードサイド批判は「金持ちの自慢話」にすぎない - 未発育都市にもリンク。

追記(20140103)

さっき、夏野剛氏への反論、過疎地では自動車税を何倍にもしないと不公平? - Togetterまとめというまとめ記事を読んだ。昨日、上の文章を読む前にこれを読んでいたら、違った書き方になっただろうと思うが、特に内容を修正する必要もないと思うのでそのままにしておく。

*1:もちろん、具体的な議論ではさらに細かな分類が必要となる。本文で挙げた区別は、比較的大ざっぱな議論であっても最低限これくらいは別物として扱う必要があるだろうというもの。

*2:Twitterではアットマークを使わない方針をとっているので、特にこの例に限らず言及はすべてエアリプライとなる。