保育所の需要を減らして女性の労働参加促進を……?

昨年5月の記事だが、成長戦略は規制緩和を中心にすべきだ | SYNODOS -シノドス-をつい先ほど読んだ。その中に、何を書いているのかがわからない箇所がある。

保育所の待機児童ゼロを5年間で実現するという政策は(もちろん、すぐヤレという人も多いだろうが)、女性の労働参加率を高め、労働力を増やす政策である。

【略】

それに対して、女性の労働参加の促進は、労働力が増えるのだから、必ずGDPを増大させる効果がある。わたしの試算によれば、日本の女性の労働参加率が英米独仏の平均になれば、日本の労働者数は9.1%増加する。間違いなくGDPを大きく増やす方策である。女性の能力を高めて、女性と男性の賃金格差が英米独仏の平均になれば、労働力が増大することと合わせて、GDPは12.8%、金額でいえば60兆円以上増大する。労働力を活用することの効果はきわめて大きいのである。

試算値の当否までは判断できないが、女性の労働力を活用することが経済の成長に役立つという考え方はもっともであり、特に反対する理由もない。そのために保育所を充実させて、待機児童をゼロにするというのは結構な政策だと思われる。
ところが、いま引用した箇所の少し後には次のように書かれている。

ただし、現在のままの制度で保育所の定員を増やすには巨額の補助金が必要になる。規制緩和保育所のコストを下げるとともに、保育所の料金を上げて需要を減らすべきである。民主党政権時代の児童手当の増額に応じて保育所の料金を引き上げれば良かったが、今からでは難しいだろう。

これがよくわからない。
規制緩和保育所のコストを下げることの是非については、定量的に論じるだけのデータを持ち合わせていない。保育所の労働環境の悪化や事故リスクの増大などのマイナス面を克服できるのなら大いに規制緩和すればいい、とだけ言っておく。
問題は、保育所の料金を上げて需要を減らす、という主張のほうだ。料金を上げて子供を保育所に預けるのを断念する人が増えれば、そりゃ待機児童の数も減るだろうが、それでは女性の労働参加を抑制することになるのではないか?
子供を保育所に預けたいと考えている親がみな共働きを希望しているとまでは言えないだろう。女性労働力向上に寄与しない保育所需要を料金を上げることでカットしよう、という発想なのだろうか? さっき「よくわからない」と書いたのはこのことだ。この辺、もうちょっと詳しい説明があってもよかったのではないだろうか。