Sense of Wanderer

発売後およそ3箇月を経ても、まだ書店で一回も見かけたことがない*1伝説の『みかにハラスメント』を後輩から借りて*2読んだ。
確かに、これは凄い。
月刊少年マンガ誌の「ちょっとえっちなコメディ」の系譜に属するマンガだが、予想以上にハードだった。上村純子だと思ったら山文京伝だった、という感じ。
第1話「えっちじゃないせかい」はまだふつうのエロコメだけど、第2話「犬のせかい」では徹底的に虐められて羞恥を煽られ、人間性を剥奪されてゆく凄まじい過程が描かれる。さらに第3話「子供のせかい」に至っては、人間の尊厳の要ともいえる精神の自由を奪われて洗脳を施される。まさにハードSMの世界だ。ただし、責めはあくまでも精神的なもので、人体改造は扱われていない。併録された「かすみ♂?」には身体の変形という要素が含まれているが、これも人体改造そのものがテーマではない。
だから、ここに引きあいに出すのは本当は筋違いなのだが、それでも言及してみたくなる作品がある。それは、昭和の奇書『家畜人ヤプー』だ。*3
両者の共通点は何か? それは、どちらもSFであるということだ。『家畜人ヤプー』がSFであることは自明だが、『みかにハラスメント』も、通俗SFでおなじみのマッドサイエンティストが登場して悪魔の発明を行い現実世界とは価値観の異なる別世界を現出させているのだから、紛れもなくSFである。また「子供のせかい」に時間テーマSF*4の変奏を聞き取ることはそう難しくはない。「SMはSFである」などと強弁するつもりはない。だが、両者の親和性は疑うべくもない。

*1:というのは単に最近マンガコーナーに行く機会が減っているからだと思う。一時期は絶望的なまでに品薄だったが、今は大きな書店ならさほど入手困難ではないとも聞く。

*2:『扉は閉ざされたまま』を貸してほしいと頼んだら、いっしょに『みかにハラスメント』も貸してくれた。

*3:いうまでもなく、『家畜人ヤプー』ではさまざまな人体改造が扱われている。

*4:ハイペリオン』の例のアレなど。