無明の闇に論理の光を

知の教科書 論理の哲学 (講談社選書メチエ)

知の教科書 論理の哲学 (講談社選書メチエ)

書誌データでは「作者: 飯田隆」となっているが、実物では「飯田隆 編」となっている。正確にいえば「編著」だろうが、それにしても単著でないことに違いはない。Amazonはもっとしっかりしてほしい。
複数の人物によるアンソロジーは、ややもするとそれぞれの執筆者の興味関心が表に出すぎて本全体の内容が散漫になる。小説ならそれでもいいかもしれないが、入門書の場合はそれでは困るので、ちょっと心配したのだが、それは杞憂だった。それぞれの章の話題はある程度の独立性を持ちながら、他の章との関連についての目配りもできている。たとえば、第二章と第三章で「砂山のパラドクス(ソリテス・パラドクス)」が逆の仕方で紹介されているが、そのことは第三章の註1でちゃんと断られている。
論理学の入門書は数多く、哲学の入門書も多数存在する。哲学の入門書の中には、論理を重視したものもいくらかはある。しかし、「論理(学)の哲学」の入門書はあまり見かけない。その意味でも、この本の存在は大きい。
ところで、巻末の著者紹介をみると、編者を除く7人の執筆者の内訳は助手2人、非常勤講師2人、大学院生4人となっていて*1この本のもうひとつの意義が示されている。いい教師に出会えた人は幸運だ。

*1:大学院に在籍しながら非常勤講師をしている人が1人いる。