不在者とは、在らざる者のことと見つけたり

その昔、「不在者投票」という言葉が非常に気になったことがある。「不在者といえば何となく深遠な響きがある*1が、平たくいえば「いない人」だ。いない人がどうやって投票するというのだ!
しばらく考えて答えがわかった。不在者投票とは投票日当日にいない人が行う投票なのだ。だから、不在者投票を行った人は、その場でいない人にされてしまうのだ。ああ、何と恐ろしいことだろう。
このアイディアをもとにして、ショートショートを書いて知人に見せたら非常に受けが悪かった。「なんだこりゃ」と。
その後、選挙制度がかわり、「不在者投票」は「期日前投票」と名前をかえた*2ので、このアイディアは使えなくなった。がっかりした。
ところで、期日前投票があるなら、期日後投票があっても罰は当たらないと思う。投票日に急に用事ができたとか、何となく気が乗らなかったとか、開票結果が出てから投票したいとか、そういった事情のある人のために、投票日の翌日から一週間か十日程度の期間に期日後投票を受け付けることにすれば、投票率はもっとあがることだろう。ぜひ御一考願いたい。

*1:もっとも、この深遠な響きは星のまたたきの音にも似て、誰にでも聞こえるというものではない。

*2:これは不正確な言い方で、今でも不在者投票の制度は残っているのだが、詳しく説明するのは面倒なので、「昔の『不在者投票』=今の『期日前投票』」ということにしておく。