大豆とマンション


遺伝子組み換え大豆じゃないってことは、無農薬農法でもない限り薬漬け大豆を口にするってことだ。
無農薬にすれば、大豆にかかる手間が増えるのでコストも増える。
安さか安全性か、そのバランスは難しい。
これ、意味がよくわからない。
対比されているのは次の3つなのだが……

  1. 遺伝子組み換え大豆
  2. 無農薬農法で育てられた大豆
  3. 薬漬け大豆

2と3はもちろん排他的選択肢だが、1はどうなのか?
遺伝子を組み換えて農薬の量が減らせるということなら、「遺伝子組み換えか、薬漬けか」という選択になるのだろうけれど、上の引用文の少し前で紹介されている農家の人の話では、こうなっている。


ここでは大豆で話をするけども、遺伝子組み替え大豆は『ラウンドアップ』という除草剤に耐性を持つように遺伝子を組替えてある。
(略)
この除草剤は非選択性、つまりスギナだろうがタンポポだろうが樹木だろうがどんな植物にでも効くんだよね。
ということは、こういうことなのではないだろうか?

遺伝子組み換えでない大豆
ラウンドアップを使うと雑草と一緒に大豆まで枯れてしまうので思う存分撒布できず、人手で除草する手間がかかる。
遺伝子組み換え大豆
ラウンドアップに耐性があるので、大豆のことを気にせずに撒布でき、人手が省ける。

この図式に従えば遺伝子組み換え大豆のほうがより薬漬けになっているということになるような気がする。
もちろん、現実にはこの図式は当てはまらないはずだ。遺伝子組み換えの仕方と効果は一種類ではないし、農薬の種類と効果も一種類ではないからだ。ただ、ここで取り上げられている例ではそうなるというだけのこと。
ところで、安さと安全性のバランスといえば、昨今話題になっているマンションやホテルの偽造設計事件など、まさにそのせめぎ合いから生じたものだろう。自重で潰れる建物は論外だが、震度5強の揺れに耐えられない建物であっても、それほどの地震が来なければ無事耐用年数を全うするかもしれない。他方、鉄筋の密度を減らせば確実にコストは下がる。
リスクは可能性と確率でしか表されず、メリットは現実かつ具体的な形で表れる。この非対称性が安さと安全性の比較考量を難しくしている。