「サヨナラ」ダケガ人生ダ

最近各所で話題になっている『“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)』を先日、神田佐久間町の某書店で買ったところ、店員さんから「先に『人間失格』を読んでからのほうがいいですよ」と助言を受けた。小学生の頃に新潮文庫*1で読んだことがあるが、悲喜劇名詞(リンク先は特に関係ありません、念のため)のくだりすら覚えていないくらいなので、どうも一度読み直しておいたほうがよさそうだ、でも大昔に買った本だから本の山の地層の奥底に埋もれてしまっていて探すのに難儀しそうだし、かといって同じ本をもう一冊買うのも郷原業腹だ、さてどうしよう、と思い悩んだあげくに図書館で借りてきた。
図書館の駐車場で最初のほうを読み始めると、すぐに内容に引き込まれ、そのまま座り込んでずるずると読み続け、とうとう『人間失格』全篇を読み終えた。家に帰ってから、併録されている「桜桃」「父」「母」「グッドバイ」も読んだ。これらはみな初読で、みな面白かった。
写真の数え方は「一枚、二枚……」しか知らず、初めて「葉」という単位に出会って意味がわからず、これは主人公の名前の省略形なのかと妙に勘ぐった無知な小学生は長い年月を経て無恥な大人となったが、肝腎の中身は成長せぬままでうだうだぐだぐだどうにもこうにもならない日々を過ごしている。そんな身に『人間失格』の浸みること、浸みること。痛みがやわらぐまでしばらくほかの本が読めそうにない。
というわけで、『“文学少女”と死にたがりの道化』はしばらく積ん読ことにしよう。