ひとはごく些細なことで不幸になる

Uターン禁止で引っかかって反則きっぷを切られた。
反則金は6000円だ。


反則金の納付はあなたの任意です。通告を受けた日の翌日から起算して10日以内に反則金を納付した場合は、表記違反については刑罰が科されなくなり、又は家庭裁判所の処分を受けなくなりますが、この期間内に納付しなかった場合には、刑事訴訟法又は少年審判手続で処理されることになります。
む、むきーっ! 何が「あなたの任意」だ!
……いかんいかん、怒ると血圧が上がる。落ち着こう。「無我執」こそ幸福への道だ。我執を捨てれば怒りも消える。無我執の境地に達すれば、我が子が虐待を受けても心の平穏が乱されることはない……らしい。
ああ、でも6000円はもったいないなぁ。この金はどうやっても取り返すことができない。
「そんな事はないだろう? 時給600円でも10時間働けば6000円になる」
いや、そうではない。仮に何らかの労働の対価として6000円得たとしても、そこで反則金6000円を取り返したことにならないのだ。というのは、そのような場合においても「もし反則金6000円がなかったなら、現状より6000円手持ちの金が多かっただろう」という反実仮想が成り立つだろうからだ。これが成立しないのは、6000円の収入と反則金の間に因果関係が成立し「もし反則金がなかったなら、この6000円の収入は得られなかっただろう」という反実仮想が成り立つ場合だけだ。そのような状況は論理的には想定可能だが、まずありそうにないことだ。よって、6000円を取り返すことは事実上ほぼ無理だということになる。
この不幸をどう受け止めればよいのか? いい知恵は何も浮かばない。ただ、涙に明け暮れるしかないのだ。