みもの・やきもの・へうげもの

へうげもの(1) (モーニング KC)

へうげもの(1) (モーニング KC)

へうげもの(2) (モーニング KC)

へうげもの(2) (モーニング KC)

へうげもの」というのは歴史的仮名遣いで、これを現代仮名遣いで表記すれば「ひょうげもの」となる。「ひょうげ」は漢字で書けば「剽軽」だそうだ。「剽軽」は「ひょうきん」とも読み、ある年代の人間にとっては懐かしい言葉だ。あの頃、たけしもさんまも若かった。
「もの」には「物」と「者」のどちらもあてることができる。おそらく両方を掛けているのではないか。すなわち「剽軽物を追い求める剽軽者のものがたり」ということになる。間違っていたらごめんなさい。
へうげもの』という変わったタイトルのマンガがあることは知っていたが、特に関心はなかった。読んでみようと思ったのは、7/26の讀賣新聞の夕刊で米澤穂信が書評を書いていたからだ。
どうでもいいが、この書評、冒頭でいきなり

こんにちは。米澤穂信です。
と書いてあって驚いた。汎夢殿近況報告ではお馴染みのフレーズ*1だが、新聞紙上ではかなり……その……。
それはさておき。
へうげもの」の主人公、古田佐介は後年の古田織部だ。「あの有名な」と形容したいところだが、茶道マニア以外でこの名前に見覚えがある人はどのくらいいるだろうか? いちおう高校の日本史の教科書には載っているのだが、自分の記憶を辿ってみても授業で教わった覚えはないし、授業で教えた覚えもない。覚えているのは、北村薫のデビュー作『空飛ぶ馬』に「織部の霊」という作品が収録されていたことくらいだ。だから、織部の末路は知っているのだが、それより前に何をやっていた人なのか、全然知らなかった。
2巻まで読んでからネットでいろいろ検索して、織部の略歴がだいたい掴めた。参考のため、いくつかリンクを張っておこう。

最後のひとつはおまけだが、こんな賞があるくらいだから岐阜県ではきっと非常に有名な人なのだろう。
さて、肝腎の『へうげもの』の感想だが。
人物造形に厚みがあり、絵柄に味わいがあり、筋の運びに捻りがある。三要素のバランスがとれて申し分のない傑作となっている。先へ先へと読者にページを繰らせる力をもったマンガだ。
茶道の知識がない人でも安心して読めるので、ぜひ多くの人に読んでもらいたい。ただし、戦国史の概略は知っておいたほうがいいでしょう。
余談だが、『へうげもの』を読んで、2年ほど前に読んだ『戦国茶闘伝―天下を制したのは、名物茶道具だった (新書y)』を思い出した。これも面白かった。内容はきれいさっぱり忘れてしまっているので、そのうち暇ができたら再読してみようと思っている。

*1:ただし、今ざっと過去ログを読んだ限りでは、フルネームで名乗りを上げているのは追放処分ですほかの「米沢穂積シリーズ」だけだった。