異性愛者も同性愛者も同じ穴のムジナ

暇つぶしに六法全書を開いてみると、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律*1に「店舗型電話異性紹介営業」とか「無店舗型電話異性紹介営業」などといういかめしい用語が書かれていた。「店舗型電話異性紹介営業」とはテレクラのことで、「無店舗型電話異性紹介営業」とはツーショットダイヤルのことだが、その定義が面白い。

(用語の意義)

第二条【略】

9  この法律において「店舗型電話異性紹介営業」とは、店舗を設けて、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際(会話を含む。次項において同じ。)を希望する者に対し、会話(伝言のやり取りを含むものとし、音声によるものに限る。以下同じ。)の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて当該店舗内に立ち入らせた他の一方の者に取り次ぐことによつて営むもの(その一方の者が当該営業に従事する者である場合におけるものを含む。)をいう。

10  この法律において「無店舗型電話異性紹介営業」とは、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する者に対し、会話の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて他の一方の者に取り次ぐことによつて営むもの(その一方の者が当該営業に従事する者である場合におけるものを含むものとし、前項に該当するものを除く。)をいう。

似たような法律がないかと思って調べてみると、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律という長ったらしい名称の法律があった。これは出会い系サイトを規制する法律だが、案の定、文中には「出会い系サイト」という言葉は一度も出てこない。そのかわりに、法律のタイトルにもなっている「インターネット異性紹介事業」という用語が用いられている。その定義も紹介しておこう。

(定義)

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

【略】

二  インターネット異性紹介事業 異性交際(面識のない異性との交際をいう。以下同じ。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信(電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号 に規定する電気通信をいう。以下同じ。)を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業をいう。

一方では「(無)店舗型電話異性紹介営業」、他方では「インターネット異性紹介事業」となっていて、「営業」と「事業」の使い分けも気になるところだが、もっと気になるのは「異性」という用語のほうだ。端的にいえば「同性専用のテレクラやツーショットダイヤル、出会い系サイトの類はこれらの法律の規制対象になるのかどうか?」という疑問を抱いたのだ。
字面だけみれば対象外のようにも思える。だが、ある種の交際に関わる営業/事業を規制するという趣旨から考えれば、その種の交際の当事者が異性であろうが同性であろうが区別する理由はない。そう考えると、同性間のその種の交際に特化した営業/事業であっても、問題が生じたときには何らかの理屈をつけてこれらの法律を適用することになるのかもしれない。法律の世界は摩訶不思議だから、そんな事があったとしても不思議はない。
ただ、できれば法律は素人が読んでも紛れの少ないものであってほしいとも思う。せっかく日常的な言語感覚からすれば必要以上に回りくどいように感じるほど厳密な表現を用いているのだから、そこにもう一言付け加えて、たとえば「面識のない異性等(異性又は同性をいう。以下同じ。)との一時の性的好奇心を満たすための交際」と書いても罰は当たらないのではないだろうか。次回の法改正時にはぜひご検討頂きたい。

*1:いわゆる「風営法」のこと。