理由あって秋に読む
- 作者: 似鳥鶏
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/10/31
- メディア: 文庫
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行きつけの書店の新刊コーナーに積んであるのを見かけ、カバー絵に惹かれて*1手にとってみた。作者名には全然見覚えがないが印象に残る名前だ。とりあえず解説でも、と思ってページを繰ってみると、解説はなかったが、そのかわりに作者のあとがき*2があった。このあとがきが面白かったので買うことにした。
家に帰って早速本文を読み始めた。
舞台はとある市立高校、主人公は一年生の「葉山くん」。一部を除き、彼の一人称で物語が進む。どうでもいいが、「葉山」という姓を見ると、謎のミステリ書評家、葉山響氏*3を思い出す。この小説の主人公とは性格も口調も全く異なるのだが、いつまで経っても「葉山くん」の下の名前が明かされないので、葉山響氏のイメージを払拭することができない。仕方がないので、途中でいったん本を閉じて、イメージを中和するために葉山嘉樹の『セメント樽の中の手紙』を読みかえしてみた。でも、葉山嘉樹には会ったことがないので、あまり役には立たなかった。葉山透だったらよかったか? いや、葉山透にも会ったことない*4しなぁ。
そんなこんなで雑念を抱きつつ読み進めたのだが、登場人物たちの洒脱な会話と少し癖のある地の文とが相まっていい味を出しており、面白く読めた。ちょっと饒舌な赤川次郎という感じか。もう10年以上赤川次郎の小説を読んでいないから、うろ覚えだけど。
「ミステリとしての評価は?」と訊かれたら腕組みせざるをえないけれど、「柳瀬さん」*5がかわいいので読後感はよかった。同じ舞台とキャラクターで続きが書ける終わり方になっているので、ぜひ続篇を期待したい。