都市は空洞化し、郊外は荒廃し、山村は消滅する

ファスト風土」というのはきわめて論争的な言葉で、郊外化現象を現代社会の病理として捉える視点を含んでいるので、このような文脈で用いるのにはやや違和感があるのだが、それはともかく主張の内容にはほぼ同感。実際、郊外に広がった生活・商業空間が今後維持できなくなるだろうという見込みをもって、都市の拡散抑制、再集中政策をとっている自治体が最近増えている。コンパクトシティ - Wikipediaをみると最近の動向や問題がよくまとまっているので、参照していただきたい。
いろいろ問題はある*1が、これからしばらく都心回帰が進むのは間違いないだろう。もっとも、「都心回帰」といっても、行政が考えているような同一地方都市圏内での人口移動ばかりとは限らず、むしろ、大都市圏への人口流出の心配をすべきなんじゃないかという気もする。
かつて、地方の濃山漁村から仕事を求めて都市へと人口が流出し、過疎問題が発生した。その問題が解決しないうちに、都市の郊外化が始まり、中心市街地が空洞化した。その問題への有効な対応策が見いだせないうちに、郊外がどんどん荒れ始めている。流浪の民は漂泊を続け、残された人々は廃墟を前に立ち竦み、首都行政はパンクしかねない*2
なんともはや、やるせない話ではある。

*1:そこには書かれていないが、「コンパクトシティ」がはやっていることに乗じて中山間地域の集落再編を唱える人が出てきているのがちょっと不安だ。

*2:国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によれば、2005年から2035年にかけての老年人口増加率は埼玉県、千葉県、神奈川県で75%を超え、東京都でも50%を超える。通常、高齢化問題を考えるときには高齢化率を指標として語ることが多いが、インフラ整備の観点からすればある時点で高齢者数が全人口に占める割合もさることながら、その割合が経時的にどう変化していくのかを示す変化率も無視できない。