福祉と文化を秤にかけりゃ福祉が重たい地方行政

滋賀県の平成20年度当初予算案で福祉予算が削減されたのに反発した県議会の会派が、びわ湖ホールを半年休館して捻出したお金を福祉予算に回すという修正案を提出しようとしている、という話。このニュースはここで知った。情報もとでは「大阪府問題が、滋賀県にも飛び火したようだ」と書かれているが、大阪府は知事が文化施設の予算を削減する方針を示しているのに対して、滋賀県では議会側から持ち上がった動きなので、少し事情は違っているように思った……のだが、平成20年度予算における主な見直し事項調【PDF】をみると、知事提出の予算案で既にびわ湖ホール管理運営費が1億860万円削減されているほか、文化施設関連で、次のような見直し事項があった*1

こうやって並べてみると、大阪府のように華々しく(?)やらかしているわけではないが、滋賀県もやっぱり文化施設への予算を削る方向で動いているのがわかる。それにしても、琵琶湖文化館が休館するとは……。そのうち行こう行こうと思いつつ、まだ一度も訪れたことがないのに。215点の国宝・重文はいったいどうなってしまうのだろうか?
それにしても不思議なのは、滋賀県の財政状況だ。関西の各府県は概して沈滞気味だが、滋賀県は最近元気な中京圏に近く、産業に勢いがあり人口も増加しているという話を聞きかじっていたので、なんで福祉と文化を秤にかけるような羽目に陥っているのか、すぐにはわからなかった。だが、その疑問はここを見たらすぐに氷解した。県税収入は年々増加しているが、それを上回るペースで地方交付税が減らされているのだ。これでは、ジリ貧になるのも無理はない。でも、しょっぱい話だ。
ところで、滋賀県の「福祉」と「文化」といえば、昨日言及したばかりのボーダレス・アートミュージアム NO-MAのことが気になった。これは県立施設ではないが、滋賀県社会福祉事業団には滋賀県のお金が入っているはず。でも、予算見直し事項調の一覧表を見た限りではよくわからなかった。そこで、健康福祉部の事業概要【PDF】をみると、障害者福祉対策費のうち障害者地域生活移行促進事業費補助に9923万8000円が計上されていた。一方、平成19年度当初予算【PDF】では、同じ項目の予算が1億18万4000円となっている。その全額がNO-MAへの補助金というわけではないので単純比較はできないが、平成19年度はこのほかに「アール・ブリュット・コレクションと日本の障害者アート連携事業」に200万円ついていることを考えると、やはり予算は削減されているようだ。
ここでちょっと脱線して、県民文化部の事業概要【PDF】から滋賀県立近代美術館に関する事業をみると、

(1) アールブリュット展(企画展)(資−県文5) 39,621
「加工されていない、生のままの芸術」を意味する「アール・ブリュット」のさらなる理解・普及を目指すとともに、「生命」により直結した「表現」方法のあり方を広く紹介することを目的に本展を開催する(32日開催)。

と書かれていた。
で、資料編に目をやると、

5. 展覧会の概要
■「アール・ブリュット・コレクション」(スイス・ローザンヌ市)と並ぶ「アール・ブリュット」の世界有数のコレクションを誇るフランスの非営利財団「abcd」(art brut connaissance & diffusion=アール・ブリュット:理解と普及)が所蔵する約2,000 点の中から、厳選された約60 人の作家(日本人作家6人を含む。うち滋賀県ゆかりの作家2人)による約130 点の作品を展示します。
■連続講演会「生命(いのち)のアートだ」(仮称)… 会期中7回開催
「abcd」主宰者、アーティスト、障害者福祉・ボーダレスアート研究者等による連続講演会を開催し、「アール・ブリュット」のさらなる理解と普及に寄与するとともに、「生命」に直結した「表現」のあり方について参加者とともに考えます。
■「abcd」が所蔵する映像資料も活用し、「アール・ブリュット」の社会的、芸術的認知を
さらに高めるとともに、滋賀県からメッセージ性のある芸術を発信します。
6. 連携協働の取り組み
ボーダレス・アートミュージアムNO−MA(近江八幡市)において、「アール・ブリュット・コレクション」と連携した企画展『アール・ブリュット/交差する魂』(会期:平成20年2月28 日〜5月11 日)が開催されることから、滋賀県から全国に向けてアール・ブリュットに接する機会を発信していくため、広報面や事業実施面などで連携協働します。

と書かれていた。これはぜひ見に行きたい。
脱線している間にそろそろ日付が変わりそうになってきたので、今日のところはここまで。もしかしたら続きを書くかもしれない。

追記(2008/03/06)

京都新聞電子版どうする滋賀県財政という特集記事があるのを発見した。ざっとみたところ、東京大大学院の神野直彦教授へのインタビューで、大阪府橋下知事に言及していた。

*1:行ったことがない施設も多いので、もしかしたら文化施設でないものが混じっているかもしれないし、見落としがあるかもしれない。また、それぞれの施設の予算削減内容が複数ある場合は、適当に端折って紹介している。