久しぶりにミステリを読んだ

君の望む死に方 (ノン・ノベル)

君の望む死に方 (ノン・ノベル)

確か、今年に入ってからはミステリを1冊も読んでいなかったはず。たぶん、3ヶ月か4ヶ月ぶりだろう。
もしかしたら、ミステリを読むための基礎体力がなくなっていて最後まで読み通すことができないかもしれないと危惧したが、読み始めるとすらすらと面白く読めて、途中でだれたり飽きたりせずに読み切ることができた。
ただ、ミステリに対する勘がすっかり鈍ってしまっていたのは確かだ。
たとえば、この小説の冒頭の文章を見てみよう。

静岡県熱海市消防本部に一一九番通報があったのは、一月十三日の午前七時四十七分だった。
通報の主は、株式会社ソル電機の小峰と名乗った。ソル電機は、熱海市内に保養所を持っている。小峰某は、その保養所から救急車の出動を要請していた。
保養所内で、人が死んでいるというのだ。

この文章には明らかに不自然な点がある。それはさすがにすぐ気づいた。だが、その「不自然な点」から想像を巡らせて、考えられる可能性を十分検討するには至らなかった。もしそれができていれば、結末は想定の範囲内に収まっていたかもしれないのだが、実際にはノーガードでラストシーンを迎えることとなった。
途中、「そんなの推理でわかるわけないよ〜」と言いたくなる場面がいくつかあったものの、ラストの意外性は手放しで賞讃したい。ド変態女の暴走っぷりに感服した。
これをきっかけに、しばらく集中してミステリを読んでみようかと思っている。集中力がどれだけ続くかは疑問だが。
最後に、上で述べた「不自然な点」について説明しておこう。もしかすると、予断を与えることになるかもしれないので、「続きを読む」記法を用いる。




ふつう、変死体を発見したときには、一一九番ではなく一一〇番に通報する。完全に死にきっているかどうかが判然としない場合には救急車を呼ぶこともあるので、必ずしも一一九番通報が不適切だというわけではないが、ミステリの冒頭に置かれた文章であることに鑑みれば、ここには何か別の事情があると疑ってみてもバチは当たらないだろう。