姉萌えルサンチマン伝

夕陽の梨―五代英雄伝

夕陽の梨―五代英雄伝

というわけで、ようやく『夕陽の梨』に取りかかることができた。一気に読み終えた。
読み始める前に全然下調べをしていなかったので、この小説のジャンルを勘違いしていた。同じ著者の『僕僕先生』と同じくファンタジー時代小説だと思っていたのだ。実際に読んでみると、超自然的な要素は全くない、純然たる歴史小説だった。
唐の末期に貧乏人の子として生まれた朱温という人物がこの小説の主人公だ。オビをみると、朱温とは後梁を建国した朱全忠の若い頃のようだ。そう言われてみると、なんとなく「朱全忠」という名前に見覚えかあるような気もするが、「後梁」と言われてもとっさにピンとこない。唐の次は宋かと思っていた。
そんなあやふやな知識しか持っていないので、小説の内容がどこまで史実で、どこからが作者の創作なのかは全くわからないが、単純にストーリーを追っていくだけでも十分楽しめた。小説ではないが、何年か前に『中国の大盗賊・完全版』を読んだときの読後感に似ている。だがそれだけではない。
朱温には汀という姉がいて、この二人の会話から小説は幕をあけるのだが、この「汀姉ちゃん」が非常に愛らしく描かれている。ところが、じきに汀はあんな目やこんな目に遭ってしまい、弟たる温の姉への思慕*1が妙な方向にねじれていってしまうわけだ。これが非常にたまらない。何のことかわからないだろうが、未読の人の楽しみを奪ってはいけないので、これ以上は説明できない。
ぜひ、ご自分の目で確かめていただきたい。
話はそれからだ!

*1:どうでもいいが、名前が温だけに、渡辺温の『可哀相な姉』を連想してしまった。