『秋期限定栗きんとん事件』の分裂

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

2006年の冬、『秋期限定栗きんとん事件*1発売時期を予測したことがある。

そこでは「早くとも来年冬までは出ない」と書いたが、まさかそれからさらに一年以上も待たされるとは思っていなかった。しかも上下巻とは……。
上下巻の上巻だけ出て下巻が出ないことも稀にあるので不安だったが、とりあえず上巻を読んでみた印象では、あちこちでかなり伏線を張っているようなので、これで下巻が出ないとは考えにくい。まあ、天変地異で出ない可能性もあるので確実なことは言えないが、少なくとも原稿がまだ仕上がっていないせいで延期することだけはないだろう。ほっとした。
上巻の内容だけでは、ストーリー展開については何とも言えない*2ので、本筋と関係のない感想をいくつか思いつくまま書き記してお茶を濁すことにしよう。
ひとつめ。小市民シリーズの前作『夏期限定トロピカルパフェ事件』では、オビのキャッチコピー「緊張の夏。小市民の夏。波乱と驚愕の夏休み!」で度肝を抜かれたが、今回も凄かった。

小鳩君に、彼女ができました。
「ねえ、ジョーって呼んでいい?」

本文の台詞をちょっと加工しただけなんだけど、この作品の中からその台詞をチョイスするセンスはお見事でした。
ふたつめ。「学内」とか「学外」という言葉を何度か見かけたけれど、高校だったら「校内」「校外」のほうが普通じゃないかと思った。
みっつめ。正式タイトルは『秋期限定栗きんとん事件』なのに、栗きんとんは一度言及されるだけで実物が出てこない。仮題の『秋期限定マロングラッセ事件』にちなんだのか、マロングラッセの作り方を小佐内さんが解説するシーンがあるのだが、妙な妖気を発している。抜き書きしようかとも思ったが、未読の人から楽しみを奪ってはいけないので自粛。169ページから170ページに注目。
……とりあえず上巻の段階ではこんなところ。

追記

よっつめ。創元推理文庫にはカバー裏*3と扉に紹介文を書くスペースがあるのだが、いま『秋期』上巻の紹介文をみると、何とカバーと扉の文章が全く別の粗筋になっていた。一致しているのは、シリーズ第三弾というところだけ。こういうお遊び、嫌いじゃないの。

追記の追記

上のふたつめに関して、ブクマでこんなコメントが……。

Thsc 「校内」「校外」だとソフ倫の審査通らないから…… 2009/02/28

なるほど、これは秋期限定処女喪失事件の伏線だったのか!

*1:まだ『秋期限定栗きんとん事件』ではなく、『秋期限定モンブラン事件』から『秋期限定マロングラッセ事件』に仮題がかわった頃だった。その後、マロングラッセと栗きんとんの間を行ったり来たりして、時には栗金飩になったこともあった。

*2:とりあえず、ミステリとしてのテーマは「ミッシング・リンク」だ、という程度のことはわかった。もっとも、その謎は既に上巻で半分くらい明かされてしまっているので、何か別の仕掛けがあるのではないかと思う。

*3:カバーを外して裏返したところ……ではなくと、裏表紙のところのカバー。日本語は難しい。