いかにして連立方程式の解に到達するのか?

待ちに待った*1シートン俗物記の「自滅する地方」シリーズ最新作だ。今回も力作で読みごたえがある。
ただ、ひとつ疑問がある*2。都市内から自動車を排除するためには多くの人々の理解と合意が必要となるが、どのような手段によってそれらを得るのか?
人は必ずしも目先の利益のみで行動するわけではないが、それが行動決定の大きな要因になることも確かだ。根気強い説明と説得により、「連立方程式の解」が合理的であることを人々に納得してもらうのも大変だが、合理的な「解」を目先の利益よりも優先する気にさせるのはもっと大変だ
「解」と目先の利益とが一致するなら話は簡単だが、そこまでは無理としても、「解」と目先の利益が大きく相反することのないような仕組みを作るのでないと、なかなか人々の理解や合意は得られない。そのような仕組みとセットになって、はじめてコンパクトシティは「処方箋」たり得るのではないかと思う。
ところで、リンク先の記事は"中心"が存在しない日本の都市にコンパクトシティは似合わない。 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月に明示的には言及していないけれど、書きぶりから察するに当該記事を強く意識したものであることは間違いない。
でも、議論は全くかみ合っていない。両者の文章から一部分を抜き出し、架空の問答を捏造してみよう。

やれない理由なんて幾ら挙げても意味がありません。なぜなら、すでにやり遂げた人々がいるのですから。先例も無い状態でビジョンを頼りに人々を根気よく説得し、実現した人々の偉業に比べたら、それに範をとって行動に移すなんてずっと楽な事です。それさえ行動に移さない事をやれない理由を挙げて正当化を図るなんてあまりにみみっちいだけです。

「お説ごもっとも、スミマセン」としか言えない。

*1:「コンパクトシティ」が抱える3つの課題 - 一本足の蛸参照。

*2:細かい話をすればもっといくつも疑問点があるが、ここではざっくりと大まかに述べておく。