「庶民の味」油かす

大阪の“庶民の味”「油かす」が静かなブームとなっている。牛の腸を油で素揚げした食材だが、こくのある味と独特の食感が、テレビなどのメディアで取り上げられたことで、お好み焼きやうどんの店も油かすを使うケースが増加している。本来は腸から油をとった後の副産物のため、安価だったが、この人気で値段が高騰。販売店では品薄状態が続いている。

油かすはぶつ切りにした牛の腸を揚げて作る食材。うどんに入れるケースが多く、どっしりとした食感と独特のコクが出る。しかし、一般に流通する部位ではなく、これまで知名度は限定的だった。

油かすが「庶民の味」と言っているのは、これが高級食材ではなく安価だからだろうが、「一般に流通する部位ではなく、これまで知名度は限定的だった」とも書いている。一般に流通していないということは大衆的ではないということでもあるので、そのような食材を「庶民の味」と表現するのはなんかちょっと違うんじゃないか?
ウィキペディア曰く、

油かす(あぶらかす)とは、食肉から食用油脂を抽出した残滓であり、元の原料や地方により様々な呼び方がある。畜産物を生産・消費する歴史の長い世界中の地域で見られる食品である。

「油かす」の名称は、一般的には西日本の同和地区を中心に流通する牛馬の大腸や小腸を原料とした保存食を指す。食肉を採取した後の廃棄物を原料として作られるため、従来は屠畜業に携わる者の多い被差別部落民の間でのみ密かに生産・消費されてきた。さいぼしと並ぶ部落の伝統食であり幻の食材であったが、差別や偏見が解消されるにつれ、その独特の風味が一般にも広く知られるようになってきた。なお、牛馬の腸を用いた狭義の「油かす」以外は部落との関連性は薄い。

ところが、産経の記事には「同和地区」とか「被差別部落」という言葉は全く用いられていない。ただし、わかる人にはわかるように書かれている。

「油かす」に詳しい元大阪人権博物館学芸員の太田恭治さんは「食肉解体に従事する人たちを中心に食べられていた食材で知名度がなかった。品不足を嘆く声はあるが、このおいしさが認められたのはうれしい限りだ」と話している。

わかる人にはわかるのだし、わからない人には強いてわからせる必要はないのだ、ということなのか。それとも別の考えがあってのことなのか。なんとも判断はつかないのだが、妙にむず痒い記事だ。
もうひとつむず痒さを感じたのが、これ。

このニュースのトピックス:橋下府政

うーん、何だかなぁ。

参考

油かすの歴史、その作り方、それを使った料理などについては『ホルモン奉行』に詳しく書かれているので、興味のある方はぜひどうぞ。初刷が2003年に出た本なので、油かすの知名度に関する記述は現在の状況とは大きく食い違っているが、これはこれで当時の状況を伝える貴重な歴史資料と言えるだろう。

ホルモン奉行

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