スローフードとナショナリズム

昨日、『サマーウォーズ』の感想文を書く前に、サマーウォーズ 感想 - Google 検索からリンクを辿って、ざっといくつかの感想文を読んでみたのだが、その中に【A面】犬にかぶらせろ!: 『サマーウォーズ』感想、ヱヴァ新劇場版:破との共通点とかがあった。その中に次のような記述がある。

食文化というのは、作物を生む土地に紐付いているので、イタリア北部のナショナリズムの発露としてスローフードが出てきたように、排他的な思想を生みやすいアイテムだと思うのだけど、ここでは血縁や家名なんて重要じゃないというアイテムに用いられているのだろう。

サマーウォーズ』とはあまり関係がない話*1になるが、ここでスローフードについて「イタリア北部のナショナリズムの発露」と書かれているのが非常に強く印象に残った。
スローフード運動が反グローバリズムのひとつの動きだということに異論はないが、さて、それはナショナリズムとか排他的な思想というものと直ちに結びつくものかどうか。むしろ、コスモポリタニズムへの親和性が強い運動なのではないか、とその時は思ったのだが、別にスローフードについてあまりよく知っているわけでもないので、少し調べたところ、こんな記事を見つけた。

本日のテーマは小野さんの発表の「ファーストフードvsスローフード」。

食の「マクドナルド化」現象と、それに対してヨーロッパで起きた「スローフード」運動の対立構造を、グローバリゼーションとそれへの反動という図式でとらえようという、わりとわかりやすいお話である。

【略】

ご存じの通り、イタリアのスローフード運動は、マクドナルドのローマ出店に対する批判の運動として、イタリアの伝統的食文化を守れ、というスローガンのもとに始まった。

伝統的な食材を用い、伝統的なレシピで、伝統的な食習慣に則って飯を食うのがポリティカリーにコレクトなイタリア人であるという話をきいて、文句を言う人はいないだろうが、私は「ちょっと待ってね」と言いたくなる。

ちょっと待ってね、とタイムが入るのは、このスローフード運動の発祥と同じ頃に同じピエモンテでどういう政治運動が起っていたのかを連想してしまうからだ。

それは北部同盟の「北イタリア独立運動」である。

【略】

その北部同盟運動の拠点のひとつがピエモンテ

そこで同時期に「マクドナルドのハンバーガーのような汚れたアメリカ物質主義をイタリアの地に入れるな」という運動が起きたことは、政治史的には平仄があっている。

この運動の拠点が1920年代のムッソリーニファシズム運動のそれと重なっていることもいささか気になる。

「政治史的には平仄があっている」という言い回しはやや狡いように思う*2が、直接的な因果関係や強い影響を示す証拠を提示できないので、こう言うしかなかったのだろう。
ともあれ、これからスローフードについて考えることがあれば*3少し慎重に取り扱うことにしようと思った。

*1:食文化にはいろいろな要素が含まれているが、『サマーウォーズ』では食事のスタイルに焦点があてられており、食材については新潟の万助が持ち込んだイカの描写があるくらいだ。信州上田の郷土食が食卓に並んでいたという記憶もない。気がつかなかっただけかもしれないが。

*2:その点、「イタリア北部のナショナリズムの発露」のほうが言いたいことがわかりやすい。その分、隙も多くなってしまうわけだが。

*3:そういう機会はないかもしれない。