言いたいことはよくわかった、しかし……
- 作者: 竹原信一
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2010/02/16
- メディア: 単行本
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現在の地方自治制度や地方行財政の問題や「地方分権*1」「道州制」などの話題について、非常に明快な議論を展開しており、読みやすくためになる*2。自治大学校や市町村アカデミーで教科書として採用してもいいのではないかと思った。
しかし、これだけ広い視野と見識がありながら、話が阿久根市のことになると、議会と市職員への憎しみが書き連ねてあるばかりで、これらの「敵」を打倒した後、阿久根市をどうしていきたいのかというのが全然見えてこないのが不思議だった。もしかすると、大所高所からの一般論と足元の話題とは別人が書いているのではないかと邪推してしまったくらいだ。
たとえば、肥薩おれんじ鉄道の問題*3に対してこれからどのように対処すればいいのか? たとえば、A-Zスーパーセンター*4と中心市街地の商店街の関係をどう考えるのか? 産業振興の手立てはあるのか。人口流出を食い止める策は? そのような疑問に対する明確な回答はもとより、著者の構想を推測する手がかりすらもなかった。
「これは、そういう本ではないのだ」と割り切って読むのがいいのかもしれない。
しかし、せっかく現職の市長が書いた本なのだから、現在紛糾している事象についての見解だけでなく、阿久根市の未来像についてのある程度の素描くらいは欲しかった。ついでにいえば、15年早かったら『珍日本紀行』に取り上げられたこと間違いなしのシャッターアートのことも書いておいてくれると面白かったのだけど。
まあ、ないものねだりしても仕方がない。これはこれでかなり楽しめたので満足だ。